写真はイメージです

取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

埼玉県内に住む妙子さん(仮名・71歳)は、38歳になる娘一家の依存っぷりに頭を抱えている。婿は39歳、孫は4歳と2歳の女の子だという。彼らは妙子さんの自宅から徒歩3分のアパートに住み、当然のように実家で夕飯を食べ、風呂にまで入って帰宅するという生活を4年間も続けている。

【その1はこちら

婿がコロナリストラに遭った

次女は33歳まで実家で生活していた。短大を卒業してから、一般企業に就職して、それなりの給料をもらっていたけれど、家にお金は入れなかった。

「夫はケジメだから月2万円でも支払わせろ、というけれど、遊びたい盛りの娘に言えないわよ、ね。それに私たちの世代よりも、驚くほど給料が少ない。娘が“ボーナスが出た!”というから、金額を聞いたら手取りで12万円だって。夫のボーナスは200万、300万円とかだったからびっくり。それに低金利で資産も作れないし、かわいそうになっちゃって」

妙子さんは、掃除、洗濯、食事の支度のすべてを行っている。

「まあ、そういうものだから。私の作っているモノを食べているから、娘たちは病気もしないし、孫たちも元気。まあそれはいいんですよ。ただ、子供が大きくなると、光熱費も食費も大変。娘と3人で暮らしていた頃は、電気代が1万5000円。水道代も1万円くらいだったのに、今は電気が3万、水道代は3万円ですよ。孫が生まれてから、ウチで洗濯するようになって、水道局の人が、“水漏れしていませんか”と来ました」

生活のランニングコストがかかる。それまで、光熱費と食費で月10万円程度だったのに、今では20万円を超えている。

外食をしにいくと、当然のように次女一家はついてきて、寿司でもファミレスでも高いものをバクバク食べる。次女も婿もよく食べるのだという。

「驚いたのは、夫が食べきれなかったハンバーグに“お義父さん、それ食べていいですか”と婿が箸をつけたこと。夫は驚いていました」

婿はバツイチで、地方出身。調理専門学校を出てから、さまざまなお店の運営に関わる仕事をしてきたという。

「まあ、客商売をしているからか、婿が調子がいい男で、悪びれもせずに、ウチで食事をしていくんですよ。こっちも食べ物のことで文句を言うのははしたないような気がして言えない。気が利かない男で、皿も下げない。まあ、娘が好きなんだからしょうがないとは思っていますが、先月、婿がリストラに遭ったんです」

婿はレストラン運営会社に勤務しており、年収は550万円程度だったという。娘の年収は200万円程度。親子4人が住むアパートの家賃は9万円。夕飯と風呂は妙子さんの実家で済ませるので、十分生活できているはずだったが、「貯金がないから失業保険が出るまで援助してほしい」と言ってきたという。

長女に相談すると、「私の知ったことではない」とピシャリ。次ページに続きます】

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