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文/鈴木拓也

毎年過去最高を更新する日本人の平均寿命。いずれ平均寿命は90歳、100歳に到達するだろうという予測もあり、定年後の人生は「余生」ではなくなりつつある。くわえて、人口構成の変化から、公的年金はあてにできなくなり、近いうちに定年を迎える世代にとって、「定年後は悠々自適に暮らす」という見通しが立ちにくくなっている。

では、どうすべきか? マスメディアがやや煽るように唱える、「現役のうちに〇千万円の貯金」を確保して、老後破綻を防ぐべきなのだろうか?

そうではなく、定年後も働き続けるという手段がベストだとアドバイスするのが、郡山史郎さん。郡山さんは、ソニーの顧問を2002年に退いたのち、2004年に人材紹介会社の(株)CEAFOMを設立した。これまで定年後の再就職希望者を含め、3,000人以上の求職者を見てきた実績を持っている。

4月に刊行された郡山さんの著書『定年前後の「やってはいけない」』(青春出版社)では、これほど人生が長くなり、社会保障が頼れない現代においては、「いま一生懸命働けば、老後は働かず、楽に過ごせる。そんな未来像は、ただの幻想に過ぎない」と喝破する。継続雇用制度のように定年後も何年か働ける仕組みはあるが、『定年後まで面倒を見切れない』のが、今まで雇ってきた会社の本音だ。

そこにしがみつくよりも、年の功を活かせるフィールドを新たに見つけ、活躍せんとすることを郡山さんはすすめる。

とはいえ、やみくもに再就職に動いてもダメで、「やってはいけない」事柄についても本書で述べている。例えば、絶対NGというのが、「求職活動中に給与の条件を徐々に下げる」こと。

「1000万円は難しそうだから、900万円でも構わない」などと100万円単位で下げていくパターンは、とてもよく目にするものだ。しかし、900万円という額も、第2ハーフの仕事としては異例の好待遇である。当然、そんな仕事は滅多に見つからない。100万円下げた程度では、まだ本人の希望額と企業の提示額のあいだに大きな格差が存在するのだ。

過去の実績と決別できない人は、半年あるいは1年ごとに希望年収を100万円ずつ下げていき、あっという間に数年が過ぎてしまう」
(本書65pより引用)

「第2ハーフ」とは、人生をサッカーの試合になぞらえての後半戦の呼び方。仮に、第1ハーフの現役時代に、ほかの社員の2倍、3倍の成果を出したとしても、定年退職した求職者は「ほとんど評価してもらえない」のが実情だという。そして、前職の年収にこだわって、可能性の乏しい就職先を探すより、現実路線の給与で決着し、(雇用側が敬遠する)仕事期間のブランクを作らないのが重要だとも。

とはいえ、なにも郡山さんは、薄給で一生働く覚悟を持てと言っているわけではない。月給20万円からスタートして、働きぶりが認められ、給与据え置きのまま週1日出勤でよくなり、4社と顧問契約してトータル80万円の月収を得ている例が本書で語られているが、才覚次第では前職以上に稼ぐチャンスもあるのだ。

上で述べたように、条件面でのこだわりは少なくする、ブランクは作らないという大原則の他に、「起業だけは『やってはいけない』」、「生活水準は上げるな」、「『定年前』の人脈は使わない」等々、定年後を考え始める世代が腑に落ちる内容が盛り込まれている。

働く理由はお金を稼ぐためというのもあるが、郡山さんは、第2ハーフで働き続けることの最大のメリットは、「誰かの役に立つという幸せだけを追求して働ける」点にあるという。

第1ハーフは不本意なことも含めて「やらなければならないこと」が多すぎるものだが、その肩の荷の大半が下りた状態で働くことは、とても楽しいものだという。

そうおっしゃる郡山さんは、1935年生まれの83歳ながら、経営者を務める元気なシニア。われわれもその生き方を見習っていきたいものである。

【今日の心の健康に良い1冊】
『定年前後の「やってはいけない」』
http://www.seishun.co.jp/book/19929/
(郡山史郎著、本体950円+税、青春出版社)

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

 

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