文/鈴木拓也
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日本整形外科学会の調査によると、腰痛に悩んでいる日本人は約3千万人。4人に1人は腰痛持ちという計算になり、もはや国民病と言えそうだ。
特に、リモートワークが普及したコロナ禍以降は、中高年の「座りすぎ腰痛」が急増しているという。
そう指摘するのは、柔道整復師の高子大樹(たかこひろき)さん。高子さんによれば、1日あたりの座位時間については、日本人は世界でも有数の長さ。1日10時間以上座っている人も稀ではないが、座りすぎは、様々な疾患リスクとともに、腰痛にかかる可能性も高まるという。
高子さんは、つらい「座りすぎ腰痛」もセルフケアで改善するとし、著書『座りすぎ腰痛は1分で治る! 腸腰筋が9割!』(さくら舎)の中で、その方法を説く。
今回は、本書にあるセルフケアの一部を紹介しよう。
主な原因は硬くなった腸腰筋
立ったり、走ったりするのに比べ、座るのはとても楽な姿勢に思える。
しかし、楽に座っているつもりでも、それが長時間におよぶと、腰周りの筋肉に負担がかかる。なかでも負担が大きいのは腸腰筋(大腰筋、小腰筋、腸骨筋の総称)だと、高子さんは記す。
座りすぎて酷使された腸腰筋は、やがて硬くなって腰痛を誘発する。おまけに骨盤が傾いて猫背にもなる。こうして腰痛は慢性化してしまう。
腰痛の「9割」は腸腰筋が関係していると、高子さんは言うが、硬くなった背骨や骨盤の歪みも可能性として考えられる。そのため本書では、身体のどこに問題があって腰痛になっているのかを判定するチェックテストがある。
その1つが、腸腰筋の硬さを確認するテスト。以下の要領でやってみよう。
1. 仰向けに寝て、足は肩幅ぐらいに広げる。
2. 片方のひざを両手で抱えて、できる範囲でお腹にゆっくり引き寄せる。
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ひざを引き寄せたとき、以下の点をチェックする。
・抱えていない足のひざが浮いてしまう場合、何cmほど浮いているか?
・左右同じようにしてみて、左右差が大きくないか?
・曲げた足の股関節に「つまり」を感じないか?
ひざが浮いても5cm以内で、「つまり」も感じないなら正常。その腰痛は、少なくとも腸腰筋が硬いせいではない。もし、5cm以上浮くとか、「つまり」を感じるなら、腸腰筋が硬くて、それが腰痛をもたらしている。
1分間の体操で腰痛を改善
上のテストで問題があった場合のセルフケアとして、1分でできる体操がすすめられている。その1つが「シェー体操」。ちなみにこの名称は、漫画『おそ松くん』のイヤミのキメのポーズにちなんでいる。
1. 仰向けに寝て、両足を肩幅ぐらいに開いて両ひざを立てる。
左右の手のひらは下に向けて両脇に置く。
2. 両足を右に倒し、ゆっくりと鼻からお腹に息を吸い込み、口から吐く腹式呼吸をする。
3. 右足を左ひざの上にかるくのせる。右足で左ひざを押さないように気をつける。
4. 左手を頭の上方に移動し、脇の肋骨ラインを伸ばし、右腕をお腹の上にのせて、「シェー」のポーズをする。
腹式呼吸を続けながら、左脇腹からお尻までしっかり伸ばし、30秒間キープしたら、1に戻り、反対側も同じようにして、「左右1セット=1分間」行う。
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(本書67pより)
これを習慣づけることで、腸腰筋は柔軟性を取り戻し、腰痛が和らいでいくはずだ。
再発予防の体操も欠かさずに
体操によって、無事に腰痛が軽快しても油断は禁物。今度は、再発しないよう予防を心がけることが肝心となる。そのために本書では、「腰痛再発予防1分間体操」が何種類かある。その1つ「壁もたれ体操」は、腸腰筋の柔軟性をキープする効果がある。
1. 壁を背にして20cmほど離れて立ち、足を肩幅ほど広げる。
壁に背中からゆっくりともたれて、腰と壁のすき間にできればタオルを入れる。ポイントは腰と壁にすき間を作らないこと(下イラスト左)。
2. 両手で壁を押さえてバランスをとり、片方の足を床から20cm上げ、2秒間キープしたら下ろす(下イラスト右)。同じ動作を「右足10回+左足10回=1セット」行う。
3セットほど繰り返すと、より効果が上がる。
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本書で取り上げられている体験談には、ヘルニアの手術を回避した60代男性や、足腰の慢性的な痛みを改善させた80代女性など、驚くような例がある。もしも座りすぎ腰痛に悩んでいるのなら、本書を一読する価値は大いにあるだろう。
本書内イラスト:森崎達也
【今日の健康に良い1冊】
『座りすぎ腰痛は1分で治る! 腸腰筋が9割!』
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定価1760円
さくら舎
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。
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