道長(演・柄本佑)の使いでやって来た百舌彦(演・本多力)。(C)NHK

ライターI(以下I):『光る君へ』第29回では、越前守に任じられていた藤原為時(演・岸谷五朗)が4年の任期を終えて、「受領功過定(ずりょうこうかさだめ)」という国司としての評価を受ける場面が登場しました。

編集者A(以下A):税をしっかり納付していたかなど、いくつかのチェック項目があって、その評価を受けるというものです。藤原兼家(演・段田安則)の家司を経て中納言に立身していた平惟仲(たいらのこれなか/演・佐古井隆之)が「宋人を帰国させるという役目を果たせておりませぬぞ」と難癖をつけていました。

I:平惟仲は前週に亡くなった皇后定子(演・高畑充希)が最後に住まっていた屋敷の主平生昌(たいらのなりまさ)の実兄ですね。さて、その「受領功過定」での為時の評価は「過」、つまり「問題あり」との評価となってしまいました。

A:ほぼ同時期に道長(演・柄本佑)の側近で丹波守だった高階業遠(たかしななりとお)は羅城門の移築費用を供出した功で丹波守に再任(重任)されたそうです。藤原為時は税として納められた「越前の紙」の余剰分を「いらない」と拒絶して「業者」とひと悶着起こしていました。この時代は「清廉」であることが評価されなかったということです。ちなみに「受領功過定」については藤原公任(演・町田啓太)が著した『北山抄』という書物に詳しいそうです。

まひろと清少納言「光と影」問答

まひろ(演・吉高由里子)と論争をするききょう(清少納言/演・ファーストサマーウイカ)。(C)NHK

I:皇后定子が亡くなった後に清少納言(演・ファーストサマーウイカ)がどのような処遇になったのか諸説あって、実際にどうなったかはよくわかっていないようですが、劇中では、清少納言がまひろ(演・吉高由里子)のもとを訪ねる場面が描かれました。この場面、なんだか胸に染み入りますね。特にまひろが清少納言に「皇后さまの影の部分も知りたいと思います」といった場面が意味深で……。

A:清少納言が「影などありませぬ! 影があったとしても書く気はございません」と強い調子できっぱりと言い切りました。

I:なんだか清少納言かっこよかったですね。ほれぼれする場面でした。この場面、私は作者の大石静さんの思いを投影した場面なのではないかと直感しました。周囲から「道長の影の部分も知りたい」と言われているのかもしれません。でも「影があったとしても書く気はございません!」と。そう思ったら痛快な感じがして、ますます『光る君へ』にはまってしまいそうです。

A:なるほど。劇中の「光と影」論争はともかく、『光る君へ』が平安時代に光を当てたことは間違いありません。功績は大です。

I:私が凄いと思ったのは、清少納言に「皇后定子の影の部分は書きません」という台詞の後で、「皇后さまのお命を奪った左大臣(道長)にも一矢報いてやろうという思いでございます」としっかりと「道長の影」に触れて来た箇所です。まひろにとっては、自らに光を与えてくれる道長ですが、皇后定子にとっては闇の存在。

A:まさに濃厚な「光と影」論争。皇后定子の影を知りたいと言っていたまひろに「道長の影」を知らせるカウンターパンチ炸裂という場面になりました。

為時、学問指南の話を断る。次ページに続きます

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