為時、学問指南の話を断る
I:ところで、まひろの生涯もまた波乱万丈であったことが改めて露呈しました。娘を生み、子育てもこれからという時に、父の為時は国司の立場を失い、ほぼ同じ時期に夫である宣孝(演・佐々木蔵之介)が急逝するんですね。
A:その失意のまひろのもとに左大臣道長の使者として百舌彦(演・本多力)がやってきました。
I:私は百舌彦を演じる本多力さんの佇まいがなんともいえない癒しになっています……。今回は、道長嫡男(後の頼宗)の学問指南として為時を「雇用」したいと申し出るための使者としての登場でした。
A:そんな風に思ってくれるのなら、「どこかの受領にでも任じてくれよ」というのが本音でしょうが、実際に越前守の任期を終えた後には「散位(無職)」となっている為時を救おうという設定です。ところが、案に相違して、為時は百舌彦の申し出を断ってしまいます。
I:為時の態度にもやもやしていたのかどうか 、百舌彦が旧知の乙丸(演・矢部太郎)と遭遇しても、旧交を温めるでもなく立ち去る姿も印象的でした。「俺はすでに昔の百舌彦ではない」というオーラが出ているようにも感じました。
I:そうですか。私は百舌彦はそんな人ではないと思います……。さて、まひろは「父上に官職はなく、私に夫なく、どうやって乙丸やいとやきぬを養い、賢子を育ててゆくのでございましょう」と為時を責め立てます。娘の賢子(子役/演・永井花奈)がいなければ耐え忍んだかもしれませんが、やはり賢子のことが心配だったのでしょう。
A:しかし、為時は世渡り下手ですよね。越前守再任(重任)を希望するなら、道長ら上級貴族に対する経済的な奉仕が必要なところでした。それがわかっていなかったんだろうなというのがよくわかる場面でした。
【女院さまの40歳のお祝いの席で。次ページに続きます】