字画も少なく、しょっちゅう目にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか心配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか? サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。
簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の記事を読みながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」第178回は、「雪ぐ」をご紹介します。なかなか目にすることがない「雪ぐ」。「雪」という漢字が持つ本来の意味が分かると、イメージしやすくなるかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「雪ぐ」とは何とよむ?
「雪ぐ」の読み方をご存知でしょうか? 「ゆきぐ」「せつぐ」ではなく……
正解は……
「そそぐ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「水で汚れを洗い落とす」「恥や汚名を新たな名誉を得ることによって消す」と説明されています。「すすぐ」と読まれることもありますが、どちらも正しい読み方です。「そそぐ」は「濯ぐ」と表記することもできますが、こちらは主に「衣服や体についた汚れを洗い落とす」という意味として使われます。
「雪ぐ」は、「汚名返上」という意味で使われることが多いため、混同しないように注意したいところですね。
「雪ぐ」の漢字の由来は?
大気中の水蒸気から出来た、氷の結晶である「雪」。「雪」という漢字の旧字体は、「あめかんむり」に「彗」が組み合わさったものでした。この「彗」は「ほうき」と読むことができ、汚れをはらうという意味を持った漢字です。
そのため、「雪」という漢字にも、汚れをはらって清めるという意味が含まれるようになったそうです。
クリスマスに起こった奇跡
皆さまは、「クリスマス休戦」についてご存知でしょうか? クリスマス休戦とは、1914年のクリスマスに西部戦線各地で生じた、一時的な停戦状態のことです。第一次世界大戦中だった当時、イギリス・フランス連合軍とドイツ軍は、ヨーロッパ西部に位置する西部戦線にて、激しい塹壕戦を展開していました。
1914年のクリスマスイブの夜、イギリス軍が塹壕で休んでいると、ドイツ軍の塹壕から「きよしこの夜」の歌が聞こえてきたそうです。これに応えるように、イギリス軍が「きよしこの夜」を歌い、両軍は塹壕から顔を出して、クリスマスを祝ったと言われています。
憎むべき敵でありながら、武器を置いて交流を始めたドイツ軍とイギリス軍。お菓子やタバコを分け合ったり、サッカーをしたりと、楽しいクリスマスを過ごしたのです。しかし、これ以降クリスマス休戦が生じることはなく、戦争はますます激化していきました。
すべての戦線で停戦状態が生じたわけではありませんが、一瞬でも武器を置いて敵同士が手を取り合ったのは、クリスマスの奇跡と言えるのではないでしょうか? まさにクリスマスという特別な日が、戦争で荒んでしまった人々の心を綺麗に雪いだのかもしれません。
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いかがでしたか? 今回の「雪ぐ」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか?
外もすっかり寒くなり、クリスマスの季節がやってまいりました。皆さまも、どうぞ楽しいクリスマスをお過ごしください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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