フランス料理の食前酒という印象が強いシャンパン。じつは和食全般に合う食中酒でもある。鮨、天ぷらからおせち料理まで、和食に合うシャンパンで新年を祝いたい。
熟成が長いもの、赤ワインのぶどうが使われたものは魚との相性がいい
握り鮨×スタンダードシャンパン
東京・銀座にある『鮨からく』がシャンパンを取り扱い始めたのは、今から15年ほど前のこと。主人の戸川基成さん(63歳)は、「扱うからにはしっかり勉強しなくては」と、世界的なワインの資格であるWSETも取得している。魚とシャンパンの相性を研究し続け、一般的には難しいといわれる魚卵との組み合わせにも明確な答えを見つけ出した。
「要点は熟成です。収穫年の表示がないノン・ヴィンテージは15か月以上の瓶熟成を経て世の中に出ますが、メゾン(生産者)によって期間は違います。熟成が長いほど魚との相性がいい。うちの定番のシャンパン『アンリオ ブリュット・スーヴェラン』は、ノン・ヴィンテージでも36か月以上の熟成です。魚卵に合わせても臭みが出ません。握り鮨にも合わせやすいです」
魚卵にも寄り添うシャンパン
雲丹と烏賊にキャビアが添えられたひと皿に「アンリオ キュヴェ エメラ2006」を合わせてみた。16年もの熟成を経てなお透明感があり、熟した果実やパンのような香ばしさと厚みを感じさせ、これらの魚介の味を優しく包み込む。口の中を探そうにも、臭みはどこにも見当たらない。
雲丹、烏賊、キャビア×熟成シャンパン
「アンリオ ブリュット・ロゼ」とイクラを合わせると、力強い果実味とわずかにある渋みとが、イクラの輪郭を際立たせながらも口の中をすっきりと拭う。こちらも臭みは全く出てこない。
「赤ワインの要素は、和食の醤油や出汁ととてもよく合います。自宅でも魚介は塩ではなく醤油で食べるとシャンパンと合いやすくなります」と戸川さんは言う。
例えばイクラは塩漬けよりも醤油漬けがお薦めだ。生魚を胡麻だれや胡麻醤油で食べるのも、シャンパンとは好相性だという。
イクラ×ロゼシャンパン
鮨からく
東京都中央区銀座5-6-16 西五番館ビル地下1階
電話:03・3571・2250
営業時間:12時〜14時(最終注文13時30分)、17時30分〜22時(最終注文21時30分、月曜〜金曜)、17時30分〜21時(最終注文20時30分、土曜・日曜・祝日)
定休日:不定 コース2万2176円〜。
取材・文/浅妻千映子 撮影/多賀谷敏雄
※この記事は『サライ』2023年1月号より転載しました。