食材としてつとに評価の高い和牛。最近は脂身の少ない赤身が求められる傾向にある。その旨さを引き出す名料理人の技を知り、家庭で実践できるとっておきの調理法を学ぶ。
近江牛本来の旨みを堪能できる老舗
開業から47年。家族3代で通い続ける常連客もいる京都屈指の肉料理店である。店主の山中康司さんは、滋賀県一といわれたステーキ店で腕を磨き、その後、京都で自店を開業した肉一筋の人だ。
全国の肉愛好家を惹きつける理由は、開業以来、頑なに最上質の肉だけを仕入れ、すべての工程で旨みを追求してきたこと。
「過度に脂のサシが入ったA5ランクの肉などがもてはやされていますが、うちで使うのは滋賀県東近江・福永喜三郎商店の健康で新鮮な近江牛だけ」と山中さん。選び抜かれた牛を鈴鹿山系の水と安全な飼料で手塩にかけて育て、適度に脂がのり、小豆色の食べ頃になるのを見計らい届けてくれる。
注文が入ると、冷蔵庫から肉の塊を取り出して切り分け、丁寧に脂身を切り落としてから高温の鉄板へ。両面に塩、胡椒をして、表7分、裏3分の割合で肉汁を閉じ込めながら焼いていく。
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「自然な霜降りだから、決してしつこくない。胸やけや胃もたれなんてことはないんです。焼くと照りや粘りもあって、旨みは深い。昔ながらの上質な近江牛はこういう味わいなのです」(山中さん)
食すと牛肉本来が持つ香りやコクは豊かに感じられるのに、後味はすっきり。200gのサーロインも、肉質が柔らかでするっと完食できる。昼時には、和風ステーキセット(7700円)もある。
くいしんぼー山中
取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎
※この記事は『サライ』2022年9月号より転載しました。