ライターI(以下I):源頼朝が亡くなった第26話のタイミングで頼朝を演じた大泉洋さんの熱い肉声が届きました。頼朝に関しては、上総広常(演・佐藤浩市)粛清や、義高(演・市川染五郎)殺害、実弟義経(演・菅田将暉)、範頼(演・迫田孝也)への仕打ちなど、ネットなどでは〈全部大泉のせい〉というフレーズが席巻しました。
編集者A(以下A):当欄では幾度か指摘しましたが、「頼朝のせい」というよりは、「日本一の大天狗」と称された後白河院(演・西田敏行)に対抗していくためという側面もあって、頼朝にも情状酌量の余地があるんですけどね。その大泉さんは頼朝についてこんなふうに語っています。ちょっと長いですが、そのままお届けします。
自分が演じる役ですから、皆さんが言うほど僕は(頼朝のことを)嫌いじゃないです。頼朝は、どこか孤独な人というか、ちょっと生い立ちが不幸だったなと思いますね。子どもの頃に家族を殺されて伊豆に流されてしまい、人をなかなか信用できないところがあるんだろうなと思う。頼朝なりの愛情はいろんな人にあったとは思うんです。政子や子供たちだったり、義時や義経だったりへの愛情はもちろんある
ただ彼にとって一番大事なことって、自分のことや、自分の一族のことなんですよね。全ては源氏の一族が末代まで繁栄できるようにということしか考えていないんだと思うんです。もちろん兄弟は大事なんだけど、自分に取って代わる可能性が一番あるのも兄弟だったんですよね、あの時代は
だからやっぱり義経にしても、範頼にしても、排除せざるを得ない。そこがまた彼が孤独で人を信じ切れない人だからこそなんでしょうけど。ただ、あの時代を見ると、兄弟を排除する、親を排除するというのが実はものすごく多いわけです。今回はそこが見事に描かれちゃってるから、頼朝さんはどうしても嫌われちゃうんだけど、「そんなのみんなそうじゃないか!」と私は思ったりもするんですけど(笑)
A:〈孤独な人〉〈ちょっと生い立ちが不幸〉〈子どもの頃に家族を殺されて伊豆に流されてしまい〉〈人をなかなか信用できない〉と頼朝のことを語る大泉さんの肉声から読み取れるのは、大泉さんが、頼朝の生涯を完璧に把握しているってことですよね。
I:京生まれ京育ちの頼朝が右兵衛権佐に任官したのは満12歳の少年時代。当時の頼朝は源氏の御曹司としてチヤホヤされていたに違いありません。ところが平治の乱で父義朝が敗れ、東国へ落ちようとしたときに、頼朝は捕らえられてしまう。
A:義朝も信頼できる家臣の郎党を頼って知多半島に落ちますが、裏切られて殺されてしまいます。少年頼朝にとって衝撃的な出来事だった。おそらく送還された京都でも多くの人から手のひら返しの扱いを受けて、人間不信になったと思われます。その上で、身ひとつで流人として伊豆に流された。
I:なんか少年時代の頼朝の歴史を振り返ると悲しくなりますよね。大泉さんはそうした頼朝の〈不幸な時代〉をしっかり受け止めたうえで、頼朝の孤独、不安、猜疑心など絶妙に演じたということになります。
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