怪僧文覚(演・市川猿之助)が髑髏を持って現れた。

ライターI(以下I):第3話では、後白河院(演・西田敏行)が幽閉されたことに触れたうえで、平清盛(演・松平健)の外孫にあたる安徳天皇が登場しました。

編集者A(以下A):先週の第2話から約5年経過した感じですね。平家を倒そうという鹿ケ谷事件などが発覚して後白河院と平家の関係が悪化して、清盛が高倉天皇と自身の娘建礼門院徳子との間に生まれた安徳天皇を即位させたということです。

I:頼朝と政子の間にも大姫(演・難波ありさ)という娘が誕生していました。若き北条義時は木簡の整理に余念がありませんが、今週のトピックスは、〈薄汚い袈裟をまとった〉〈妙な坊主〉と紹介された文覚ではないでしょうか。

A:文覚を演じているのは、2007年の『風林火山』で武田信玄を演じた市川猿之助さん(07年当時は亀治郎)。怪僧のような言動で登場しましたが、文覚は吉川弘文館の人物叢書で一書をなす〈大物〉です。文覚については『平家物語』でもけっこうな尺で登場しています。今後も注目される人物ですね。

I:なるほど。コミカルに描かれていますが、重要な場面なんですね。

A:以前、『サライ』連載「半島をゆく」で伊豆の国市を取材した際、文覚が滝行をしたといわれる滝山不動や毘沙門堂など文覚ゆかりの地もめぐりました。滝は近年水量が減少しているそうですが、真剣に修行していたとしても、パフォーマンスの地としたかはともかく舞台措置としては、最適の地でした。文覚が護摩焚きをしたと伝承される巨石もあるなど、文覚の息づかいが感じられる地でした。そうした史跡が800年以上も語り継がれているということもすごいことです。春になったらまた行きたいなと思っています。

I:だとしたら、劇中の文覚の扱いは不当だと感じませんか?

A:いえ、まったくそうは思いません。実は、文覚と頼朝は京都時代も接点があったようですし、伊豆でも劇中の数年前から交流があったかもしれません。そういうことを考えると、個人的には、坂東武士の動向を探るためのパフォーマンスを演じたのだと解釈しています。世の中を動かすには今回の文覚のような狂言回しも必要ですから。

源氏と坂東武士の複雑な系譜

杉本哲太演じる源行家が携えた以仁王の令旨が、源平合戦ののろしに火をつけた。

I:頼朝や北条家周辺がにわかに慌ただしい雰囲気に包まれました。後白河院の三男である以仁王(もちひとおう)の平家討伐を呼びかける令旨(りょうじ)を携えた源行家(演・杉本哲太)が伊豆にもやってきました。

A:〈行家?そんな縁者がいたか〉って、そりゃ少し前まで「新宮十郎義盛」だったわけですから、行家っていわれたらわからないですよね。そういう何気ない表現が楽しいです。

I:なぜか、頼朝は時政に頼政のことを聞いていました。同じ清和源氏とはいえ、親兄弟とも反目して殺し合う時代に、共通の先祖が源満仲まで遡らなければならない関係ではほぼ同族意識はないでしょうね。〈頼政の下にはつかん〉というのもその通りだと思います。

A:遡ったらということでいえば、坂東武士たちも清盛らと同根ですからね。頼朝と頼政の関係と同じです。

I:定期的に都の情勢を頼朝に報告していた三善康信(演・小林隆)が「奥州の藤原秀衡に匿ってもらえ」と連絡してきました。秀衡のもとにはすでに九郎義経が身を寄せていたわけですが……。頼朝の先祖にあたる頼義・義家父子は前九年・後三年の役を通じて、奥州に介入していましたから奥州藤原家と源氏の間にはいろいろな思惑があるのですよね。

A:将門の乱から約240年。北条など坂東武士たちの多くは、将門の時代に坂東で活動していた平氏の末裔にあたるわけです。将門を討った側の平貞盛の系譜が伊勢に移って清盛らを輩出する。そして、前九年・後三年の役で源氏に従って奥州で戦った坂東武士らもいて、その流れで、頼朝の父義朝とつながっていた。

I:そうした複雑な系譜を把握していると、わが国最初の武家政権がなぜできたのか、という物語ががぜん面白くなるのですけどね。複雑すぎて……。

A:その複雑な関係をわかりやすくしようと試みているのが『鎌倉殿の13人』の脚本だと思います。『平清盛』(2012年)のように重厚に寄せると「重い」とか「暗い」といわれますから、歴史ファンの間口を広げるという意味では大歓迎です。

I:さて、令旨の話に戻りますが、鎌倉幕府の正史『吾妻鏡』には正装に着替えた頼朝は石清水八幡宮の方向に遥拝したと記されています。こうした史料を踏まえたうえで劇中の描写になっているのですが、なんか、やっぱり面白いですよね。

A:〈お使いの方がそんなに仰々しく触れ回っていては遠からず平家の知るところとなりましょう〉っていうのは、ほんとそれ! って思いました(笑)。歴史っていうのは賢者だけで築かれているわけではないということがよくわかります。

後白河院の密旨も登場!  いよいよ頼朝挙兵へ!

I:北条時政(演・坂東彌十郎)が籠いっぱいの野菜を持って山木兼隆の屋敷を訪ねるシーンがありました。

A:彌十郎さんの演技がものすごく印象的で、いろいろな意味で引き込まれます。このシーン、『北の国から』で田中邦衛演じる黒板五郎がたくさんのかぼちゃを持って謝りにいく場面を思い出しました。

I:さて、劇中で後白河法皇からの密旨がもたらされました。

A:おおーー、そう来ましたか!というシーンでした。「そんなのあるわけない」という人も、「後白河院ならやりかねん」という人もいるでしょうが、私は、「あってもおかしくない」派です。それだけ、後白河院が焦っていたのだと解釈します。時政たちが「偽物だ」とか論争していましたが、ほんとうにそういうやり取りがあったかもしれないと楽しくなりました。

I:頼朝はその法皇の「密旨」にすがろうとします。妙な躍動感がたまらないです。「12世紀の明治維新 夜明け前」って感じがしませんか?

A:「12世紀の明治維新!?」

能吏の片りんをみせた義時

I:文覚が持ち歩く 頼朝の父義朝のしゃれこうべがキーアイテムになりました。〈必ず勝てるという証がない限り兵を挙げることはできん〉という頼朝の気持ちもよくわかりますが、政子が頼朝に「この髑髏に誓ってください」と、挙兵を逡巡する頼朝の背中を押します。

A:背中を押してくれる人や物っていうのは大事ですよね、というシーンでした。

I:髑髏に向かって〈どこの誰かは存ぜぬが〉という頼朝を見て、歴史ってこういうふうに動いていくんだとなんだかしみじみしました。

A:そして、主人公の義時が捨てられた木簡に記されたデータをもとに兵力を計算します。荒っぽいだけの坂東武士の中で、能吏の側面があることが描かれました。

I:時代が動いていく中で成長していく男。江間次郎という身分の低い男に嫁がされた八重(演・新垣結衣)の動向も気になりますし、なんだか次回も楽しみでしょうがないですね。

実務に長けた義時(演・小栗旬)の様子が描かれる。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』を足掛け8年担当。初めて通しで見た大河ドラマ『草燃える』(1979年)で高じた鎌倉武士好きを「こじらせて史学科」に。以降、今日に至る。『史伝 北条義時』を担当。
●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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