文/鈴木拓也
ゴールデンウィークの行楽で、ちょっと飲んでしまったせいか、体重が増えた。
……で、「やっぱり、お酒は太る原因なのか~」と、当面の禁酒を誓う人も多いことだろう。
でも、ちょっとお待ちを。
実は、飲酒だけでは太らないのだ。
そう言うのは、管理栄養士で日本ダイエット健康協会理事の伊達友美さん。
伊達さんによれば、そもそも「お酒の主成分は水とアルコール」。種類によっては、糖質を含むものもあるが「食事で摂る糖質の量に比べれば、たいしたことはありません」。
では、酒量がいつもより多い日が続いた後で、太るのはなぜか?
「ひょっとして、夜お酒を飲む前に食事をすませていませんか? だとすれば、1日3食ではなく、1日4食食べているのと同じことです!」
と、伊達さんは著書『ダイエットカウンセラーが教える お酒を飲んでも太らないうまい食べ方』(青春出版社)で指摘する。
惰性で食べていればやはり太る
本書で伊達さんはなにも、「太りたくなければ、飲んだら食べるな」と主張しているわけではない。
むしろその逆で、お酒は“心の栄養”であり、「飲みたい人こそ食べてほしい」と強調する。
ただ、その食べ方が問題となることはある。
例えば、付き合い酒で2軒3軒はしごして、各店でつまみをちょこちょこ食べた場合がそれにあたる。理由は単純明快だ。
欲しくもないのに、ただなんとなく惰性で食べているだけなら、それはやっぱり、ムダで余分なカロリー。ムダに食べたものはムダ肉(体脂肪)にしかなりません。
たとえショットバーで1杯飲んで、ナッツを食べただけでも、はしごをするなら「1軒ごとに1食」とカウントするくらいの意識を持ちましょう。(本書より)
つまり、晩御飯を済ませた後で、2軒の居酒屋をはしごした上に、ラーメン屋でシメのラーメンを食べたら、1日6食という扱い。
しかし、不摂生とは知りつつ、ついそんな食べ方をしてしまうこともある。
そんなときは、「いつもより多く食べたら、翌日にその分を調整する」という救済策を、伊達さんは記す。要するに、あくる日の朝食を抜くとかすれば、太るリスクは減らせる。もちろん、朝食抜きの夜の鯨飲馬食をすすめているわけではなく、あくまでも臨時の処置だ。
不足している栄養をプラスする食べ方
ここまで読んできて、伊達さんは、食べる量をとにかく減らす従来型のダイエットを提案してくるのではないかと、警戒した人もいるかもしれない。
が、その心配は無用。
伊達さんがすすめるのは、「プラス栄養メソッド」。一言で説明すれば、「足りないものをプラスすることで、今の自分を細胞レベルで代謝のいい体質に変える食事法」だ。
「食べすぎて太っている」という人は、実はそれほど多くありません。食べすぎているわけではないのにやせないのは、代謝が低い体質になっているから。その原因はズバリ、栄養不足です。現代人の食生活はただでさえ、アミノ酸や良質油などが不足しがちといわれています。(本書より)
「栄養不足」といっても、戦後の子どもに見られた、食べる絶対量が乏しい栄養失調ではない。現代人に足りないのは、「量」でなく「質」。ここに留意して食べれば、「自然とすっきりメリハリのある体形になる」と、伊達さんは説く。
そのための基本的なルールは3つだけ。
1. 楽しんで飲む(食べる)
2. 代謝を上げる栄養をきちんとプラスする
3. 飲みすぎたら(食べすぎたら)調整する
ご覧のとおり、ガマンばかりの食べないダイエットとは真逆の路線。今まで減量に挫折してきた方も、「これならできそう」と奮起できるのでは。
赤身の牛肉・豚肉は「ガッツリ食べてほしい」
では、「プラス栄養メソッド」の具体的なところを1つ紹介しよう。
それは、「肉や魚は、しっかり食べよう」というもの。
ポイントは、たんぱく質。「現代人の食事では、男性も女性もたんぱく質が足りていない人がほとんど」だという。それを補うため、良質なたんぱく質が多く含まれている肉・魚がすすめられている。
やせたいと思っている人でも、「肉は太るから」と避けたり、牛肉より鶏肉を選んだりする人が多いようです。確かに、カルビや豚トロのように、脂肪分の多い肉ばかり食べるのは控えたほうがいいですが、赤身の牛肉や豚肉なら、ステーキでガッツリ食べてほしいくらいです。(本書より)
伊達さんが赤身肉を推奨するのは、「L-カルニチン」というアミノ酸成分が豊富に含まれているから。これには脂肪の代謝を上げる効果があり、羊肉、牛肉、豚肉の順に多く含まれている。
魚については、赤身・白身問わず旬のものを選ぶようアドバイスされている。これは、「旬の魚には、その季節に私たちの体が必要としているもの」が含まれているから。
また、卵も良質なたんぱく質として挙がる。コレステロールが気になる人でも、「週6個を目安」に摂ってよいそうだ。調理法は、オムライス、卵かけご飯などなんでもOK。
居酒屋は栄養補給に最適
ところで、居酒屋通いは、太る元凶に思われるが、実はそうではないという。
伊達さんは「居酒屋は栄養補給のパラダイス」として、積極活用をすすめる。
居酒屋は、食事やおつまみのメニューが豊富で、ふだんの食事ではあまり食べない珍味もいっぱい。ちょっとずついろいろなものを食べれば、たんぱく質・ビタミン・ミネラル・酵素などやせるのに必要な栄養素がまんべんなく摂れます。(本書より)
とはいえ、野放図になんでも食べていいわけではない。唐揚げのような、酸化した油が多い揚げ物は控えめにと、伊達さんは付け加えている。
また、「肉と魚は一緒に食べないほうがよい」そうだ。そのわけは、胃の消化液の酸度にある。この酸度、食べたものによって調整されるそうで、肉と魚では、消化に適した酸度は異なる。そのため、同時に食べると、どちらの消化にも適していない酸度の消化液が出て、消化不良を起こしやすくなるという。これを防ぐため、居酒屋に入ったときに、肉と魚のどちらを注文するか決めておく。ちなみに、卵や野菜類は、どちらと一緒に食べても大丈夫。
ただし、くれぐれもつい食べすぎてしまわないようご注意。
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本書を参考に食べ方を改善していけば、お酒とも心の栄養として末永く付き合えることうけあい。酒席で食べ過ぎて「また、やってしまった……」という後悔をすっぱり断ち切りたい方には、特にすすめたい1冊といえよう。
【今日の健康に良い1冊】
『ダイエットカウンセラーが教えるお酒を飲んでも太らないうまい食べ方』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。