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梅干しは疲労回復、二日酔いや便秘解消などに効果がある日本伝統の保存食。

関東屈指の梅の名所、小田原

年が改まり、今は冬まっただ中だが、2月になれば各地から梅の便りが届く。関東屈指の梅の名所といえば小田原。そのひとつ蘇我梅林は、富士山と箱根の山々を背景に、約3万5000本の梅が一面に咲きる。2022年は2月5日から小田原で梅祭りが開催されている。

小田原の梅にゆかりの深い人物がいる。梅干し好きで知られた北条早雲(1432~1519。1456生まれの説あり)である。早雲は小田原北条氏の初代で、下剋上の先駆けといわれる戦国大名だ。いまに伝わる早雲の肖像画は、眼光するどい老僧の姿で描かれている。早雲の生活規範はまさに禅僧そのものだった。

早雲が定めた家訓の第一条は「神仏を敬うこと」であり、第二条と第三条では「早起きすること」と「早寝すること」と訓示している。京に住んでいたころに建仁寺や大徳寺などの禅寺で修行した経験によるものだろう。

毎食のように食べていた梅干

禅寺の生活習慣は、早雲の食生活にもあらわれている。禅寺では粥を主食とするが、粥とともに供されるのが梅干である。早雲は毎食のように梅干を食べていたという。

梅干は保存食としてだけでなく、疲労回復や腹痛の薬としても重宝されていた。疲労や動脈硬化の原因でもある乳酸を分解するクエン酸が豊富に含まれ、クエン酸そのものに血圧を下げる働きがあることも近年わかってきた。そのほか、二日酔いや便秘の解消にも梅干しが有効とされているのは周知の通りである。

早雲はそんな梅干しの薬効に着目し、家臣らの家の庭に梅の木を植えさせた。これが現在の小田原の梅林の起源だという。早雲は、早寝早起きと梅干の効果で、頭脳はいつも明晰だったに違いない。知謀をめぐらせ、わずか一代で戦国大名にのし上がったのである。

文/内田和浩
1962年生まれ。紀行ライター。大学では仏教美術を専攻。歴史系出版社の編集者を経てフリーに。『週刊古寺をめぐる』『週刊名城をゆく』(小学館)など寺社や史跡を巡る旅記事を執筆。著書に『ふるさとの仏像をみる』(世界文化社)。

 

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