なぜ、徒歩7分なのか、その理由は尋ねたことはないが、たぶん、自分の生活圏の中にある蕎麦屋を大切にしなさいよという意味の「徒歩7分」なのではないかと思っている。
私の家の近くにある行きつけの蕎麦屋は、ちょっと個性のある店で、機械打ちの蕎麦を中心に出すのだが、一日20食ほど、手打ち蕎麦も用意する。
手打ちの分は、だいたい昼前には終わってしまうのだが、その後も、機械打ちの蕎麦があるので、売り切れたときは、それを頼むことにしている。

この店、どういう個性があるのかというと、店の奥にカウンターがあって、そこで天ぷらを揚げているのだ。客は、カウンターの椅子に陣取り、好みの天ぷらを注文し、揚げたての天ぷらを、蕎麦とともに味わう。この天ぷらが美味しくて、ときどき店の暖簾をくぐるのだ。
この店、蕎麦屋の看板は上がっているのだが、蕎麦屋というより、天ぷら屋と言ったほうが相応しい。それだけ、天ぷらが美味しいのだ。天ぷら屋が蕎麦も出しているのだと、私は解釈している。
もちろん、それで良いと思う。
うまい天ぷらと、ついでに蕎麦まで食べさせてくれて、ちゃんと満足させてくれるのだから。
どういう形であれ、満足できる店が身近にあるということは、とても幸運なことなのだと思う。

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文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。

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