焼酎蔵からの伝統を今に生かす由緒ある施設
明治5年(1872)。現在の南さつま市に創業し、以来焼酎を造り続ける鹿児島屈指の酒造メーカー、本坊酒造。昭和24年(1949)にウイスキーの製造免許を取得し、山梨などでウイスキー造りを展開してきた歴史を持つ。そして平成28年(2016)、同社発祥の地である津貫蒸溜所の敷地内にマルス津貫(つぬき)蒸溜所が新設された。
蒸留所の歴史を知るにはまず、高さ26mの旧蒸留塔を見学したい。その昔、焼酎造りで活躍した連続蒸留機がそのままの姿で残り、圧倒される。基本的には自由に見学できるが、手の空いたスタッフがいれば案内してもらえる。
稼働中のウイスキー蒸留棟の見学を経て、重厚な石蔵造りの樽貯蔵庫へと導かれる。この日案内してくれたカフェバー担当の田中教文さん(44歳)はこう語る。
「薩摩半島の南西部で盆地という立地上、夏は暑く、冬の寒さは厳しい。そのため、樽の収縮と膨張を繰り返すことで、樽の成分が原酒に反映され、鹿児島らしい力強い酒質に仕上がります」
約30分ほどの見学後は、蒸留所に隣接するカフェバー『寶常(ほうじょう)』で有料の試飲を愉しみたい。
「蒸留所の目の前にはかつて南薩鉄道が走り、敷地内に引き込み線が敷設されていました。それを知る鉄道ファンもいらっしゃいます」と田中さん。昭和初期に建てられた2代目社長の邸宅を改装したバーで、ゆったりと過ごしたい。
マルス津貫蒸溜所
鹿児島県南さつま市加世田津貫6594
電話:0993・55・2121
営業時間:9時~16時
定休日:無休
交通:鹿児島空港から鹿児島交通のバスで上津貫を経由し、津貫バス停留所から約1分、加世田バスターミナルからタクシーで約15分
※見学は現地受け付け後、自由見学。無料。
ホテルで味わう限定ボトル
鹿児島市内に宿をとる旅であれば、高台に立つ老舗の『城山ホテル鹿児島』がおすすめだ。
桜島が一望できるホテル内には、県産食材を使った料理と酒を楽しめるバーがある。ここでマルス津貫蒸溜所と嘉之助蒸溜所(https://serai.jp/gourmet/1176543)、双方のホテル限定ウイスキーを堪能できる。鹿児島でウイスキー三昧といきたい。
【立ち寄り処】両蒸留所の限定酒が飲めるホテルのバー
ザ セラー N バロン・ナガサワ
(SHIROYAMA HOTEL kagoshima内)
鹿児島市新照院町41-1
電話:0570・07・4680
営業時間:17時~22時30分(最終注文)、土曜・日曜・祝日16時~22時30分(最終注文)
定休日:月に一度不定休
交通:JR鹿児島中央駅よりタクシーで約10分
取材・文/安井洋子 撮影/森本真哉
※この記事は『サライ』本誌2024年3月号より転載しました。