文・写真/青山直子(海外書き人クラブ/カンボジア在住ライター)

カンボジアに於いても、1月27日に最初の新型コロナウィルス感染者(外国籍)が確認されてから、日増しにその数は増えていた。感染拡大を防ぐために、カンボジア政府は3月8日からまずはシェムリアップの、そして翌週16日には首都プノンペンも含む、公立・私立に関わらず国内全ての、幼稚園をはじめとした小中高等学校の「休校措置」を発表した。そんなカンボジアの新型コロナウイルス禍での、子供たちの自宅学習の様子をお伝えしたい。

電話会社がこぞって謳う、ネット利用プランの看板 

電話会社がこぞって謳う、ネット利用プランの看板 

電話会社がこぞって謳う、ネット利用プランの看板

カンボジアでは、電話線が必要な設置電話の普及を飛び越して、無線で対応できる携帯電話が爆発的に普及した。その後のスマートフォンへの移行も非常に速く、現在では一人2,3台を持つ人も多い。その為、都市部でのITインフラはかなり整っていて、街中のホテルやレストラン、カフェではフリーWi-Fiは利用できて当たり前。各家庭でもWi-Fiの設置率は高い。また4GやLTEの回線網も充実しており、電話会社各社からは、1ドルのプリペイドカードで、100ドル分の4Gが7日間利用できるなど、格安でインターネット利用ができるプランが多数出されている。その環境下にて、スマートフォン保持者のネットユーザー90%以上が利用する大人気SNSがFacebookだ。LineやInstagramといったSNSも使用者はいるが、Facebookの比ではない。正に老若男女問わずにアカウントを持っている状況だ。

スマートフォンを見ながら、指示通りにノートに板書する

スマートフォンを見ながら、指示通りにノートに板書する

スマートフォンを見ながら、指示通りにノートに板書する

「休校措置」の発表後、国内のインターナショナルスクールはもちろんのこと、ローカルの学校でも、早速オンライン授業が検討され、順次開始されてきた。富裕層や在住外国人が多く通うインターナショナルスクールでは、GoogleHangoutsやZoomなどの会議アプリを使用したリアルタイムのオンライン授業や、GoogleClassroomを活用した課題提出形式での対応が多くみられる。その反面、都市部も含めたローカルの学校では、各家庭のWi-Fi普及率や、パソコンやタブレットの保有率が低いことから、4G環境下でも滞りなく使用でき、またスマートフォンで使い慣れているFacebookをツールとして活用することとなった。主にはメッセンジャー機能を利用して、課題の提示・提出や質問などのやり取りが行われる。

ボイスメッセージを吹き込む

ボイスメッセージを吹き込む

先生からのコメント入り画像を確認

先生からのコメント入り画像を確認

メッセンジャーにて、担任の先生が児童をメンバーとしたクラスのチャットグループを作る。そこへ課題の画像を送り、児童がそれを見ながらノートへ回答を記入し、その後ページを写真に撮り、クラスチャットに送る。先生はその画像にコメントを入れたり、別途メッセージで指導コメントを返信する。というのが基本的な課題提出の流れだ。ただカンボジアでは、文字を打ち込むチャットよりも、ボイスメッセージでやり取りをすることが多く、先生はチャットとボイスメッセージの両方を使って器用に対応している。児童はといえば、まずは「先生こんにちは」と挨拶をし名前を告げて、「先生よろしくお願いします」とボイスメッセージを吹き込む。小学校の低学年でもそうして対応している様を見ていると、この「休校措置」状況も、新しい機能への対応力を養う良い機会になっているのだろうと思える。

課題点としては、自主的に課題に取り組む児童が少ないことだろう。中高生ともなれば、ある程度は自主的に対応できるのだろうが、やはり小学生には、側で課題を見て、サポートする人がいる状況がベターなのは当然だ。しかし残念なことに、まだカンボジアの教育制度が整っていない時代に生まれ育ってきた親世代は、文字が読めない人もまだ多い。そのため、問題がわからない、答えの導き方がわからない、などとして課題に取り組まない子供をサポートすることができないのだ。また当然スマートフォンを持たない(持てない)家庭もある為、その場合は、そもそも課題に取り組むことすらできないのが現状だ。

対応措置としては、各地域の学校から「ラジオ講座」が行われている。保護者が勉強をサポートすることができないという点では同じだが、スマートフォンが無い家庭でも取り組むことができる。ただそれでも、現時点で農村部の子供たちは「休校措置」が取られてから、勉強ができていない状況が続いている子も多数いるのが実状だ。国内の全児童に教育の権利が平等に行き渡る日が早く訪れることを願う。

文・写真/青山直子
2000年よりカンボジアのシェムリアップに在住。観光業界に10年以上携わった後、現在は整体師でありズンバのインストラクターでもある。その傍ら、カンボジアでの仕事・住居・食生活などのライフ密着型記事を主に執筆している。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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