文・写真/りんみゆき(ニュージーランド在住ライター)
ニュージーランドでは全国のロックダウンが始まった初日から、多くのセカンダリースクール(日本の中高生にあたる)のオンライン授業が開始した。ここではハミルトン市にある学校のオンライン授業について紹介する。
年始からオンライン授業の準備
新学期が始まった1月末に学校側から保護者に新型コロナウイルスの拡大(その時点でニュージーランドの感染者はゼロ)で休校になる可能性があること、その際にはオンライン授業に移行するという説明があった。3月に入ってからは、生徒が使いこなせるよう、オンライン授業の予行練習も行われた。生徒も先生も保護者も万が一の事態に備えて準備していたため、3月26日にロックダウンに突入したが、特に混乱もなくスムーズにオンライン授業が始まった。今後いつまで続くかは5月4日現在、未定である。
オンライン授業の時間割
授業は平日の午前8時から午後3時半まで、通常の時間割どおりに行われる。1教科45分間授業、間には休み時間、ランチタイム、チャペルサービスもあり普段と同じ日課である。各授業のはじめには担当の先生が出欠を取る。欠席する場合は保護者が学校に理由と共に欠席届のメールを事前に出す必要があり、届けがないと無断欠席扱いとなる。生徒や保護者が担当の先生に連絡を取りたい場合は、直接先生にメールをするとその日のうちに返信がくる。
授業はGoogle Meet(グーグルミート)を利用
全教科の授業はビデオ会議ツールであるグーグルミートを利用して行われる。グーグルミートは生徒各自のIDからログインし、Google Calendar(グーグルカレンダー)から入るか、担当の先生があらかじめ送っているメールのリンクから入ることができる。授業開始時間の5分前から入室し、時間になると先生がまず出欠確認をする。クラスの生徒全員の画像が見えるように設定し、授業中基本的に生徒は音声設定をミュートにしておく。先生からの応答や質問をする時だけ各自でミュートを解除し、発言が終わったら再びミュートに戻す。生徒にとってオンラインという授業スタイルは初めての試みだが、教室にいるより集中することができ、勉強がはかどると言う生徒もいる。
宿題提出はGoogle Classroom(グーグルクラスルーム)を利用
オンライン授業でも宿題は出る。その提出はグーグルクラスルームを使って行われる。グーグル社が教育向けに開発したグーグルクラスルームは先生と生徒両方にとって課題の管理がしやすく、ロックダウン以前の普段の授業から利用しているため生徒は使い慣れている。生徒が個人アカウントにログインすると、選択教科が表示され、その中から宿題が出ている教科を選ぶ。宿題には提出期限が記されているほか、宿題の内容に関して質問がある生徒はコメント欄に書き込み、クラス全員と共有する。先生からの採点とフィードバックもここで確認することができる。ダンスなどの特殊なクラスの宿題は動画であるため、別のMOVITAE(モビーテ)というダンサー向けのツールを利用して提出する。
心のケアも重視
ロックダウン中は外出禁止のためオンライン授業という慣れない方法で授業を受けるだけでなく、友達や同居している家族以外には会うことができない。また近所でのジョギングは推奨されているが、放課後のスポーツなどができずストレスがたまる生徒もいる。この状況の受け止め方はそれぞれだが、多感なティーンエイジャーは精神的に不安定になる場合もある。学校はそれに対応し、オンライン授業中に先生が心と体のウェルネスについての講義をしたり、必要に応じてスクールカウンセラーに相談することもできる。カウンセリングを受けたい場合はまずメールで日時を決め、当日はグーグルミートで顔を見て話せる状態にする。話した内容はコンフィデンシャルなので、自他の死や傷つけるという内容以外は保護者にも伝えないことが約束されている。全校生徒宛ての一斉メールでメンタルヘルスに役に立つウェブサイトやアプリの紹介もしている。
文・写真/りんみゆき
ニュージーランドと香港を拠点にライター、通訳として活動。雑誌、機内誌、情報誌の寄稿多数。著書『海外のいろんなマラソン走ってみた』など。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。