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日本ではあまり知られていない本家本元のパエリアとは?

文・写真/田川敬子(海外書き人クラブ/スペイン在住ライター)

ここバレンシアはパエリアの故郷。ソウルフードゆえ、バレンシアっ子のパエリアに対するこだわりは強く、誰もが「バレンシア以外のパエリアなんて食べられたもんじゃない」と思っています。SNSに投稿されるなんちゃってパエリアなんて許せません。ではバレンシアではいったいどんなパエリアを食べているのでしょうか???

本家本元のパエリアは山の幸

日本でパエリアといえば誰もがエビやムール貝などがてんこ盛りになったお米料理を想像しますが、バレンシアで単にパエリアといえば“バレンシア風パエリア”を指します。具材はウサギ肉と鶏肉、現地で“バチョケタ”とよばれる平さやインゲンに“ガロフォ”とよばれる平たい白インゲン豆。バレンシア人によると、これにアーティチョーク、カタツムリ、赤ピーマン、ミートボールまでが許される材料だとのこと。ローズマリーをきかせることもあります。たとえばグリーンピースが入っていたら、もうそれはパエリアではないのだとか。

パエリア

 

日本のレシピで見かける土鍋や炊飯器で炊くパエリアなど、バレンシア人にはパエリアとは認めてもらえるわけがありません。パエリア鍋を使うからパエリアなのです。

もちろん魚介のパエリアもあります。ただ、見た目はいたってシンプル。観光客的には残念ながらSNS映えしないことが多いですね。海老とムール貝が乗っているくらいで、日本で見かけるリングイカやアサリは使いません。生野菜など言語道断で、「別にサラダを食べればいいじゃない」と言われることでしょう。ただ、しっかりとった出汁がお米にしみているのでとても味わい深いです。

魚介のパエリア

魚介パエリアはあらかじめ出汁をとる。スーパーや市場では出汁の雑魚が売られている

魚介パエリアはあらかじめ出汁をとる。スーパーや市場では出汁の雑魚が売られている

基本はバレンシア風と魚介ですが、ほかにも野菜パエリアや鱈とカリフラワー、イカ墨、そら豆とスペアリブなどのバリエーションもあります。

田んぼや畑の傍らで簡単に作れる料理として生まれたパエリア

バレンシアは昔から野菜や果物のほか、稲作も盛んな地域です。農作業に出ると昼食時にそのあたりで火を起こし、大鍋に米や野菜、肉を入れて炊いた料理がパエリアの起源だと言われています。今も家族や親しい仲間内では、お皿は使わずに直接パエリア鍋からスプーンですくって食べますが、これならパエリア鍋とスプーンだけで済みお皿はいりません。身近にある材料を使うので、海辺の漁村では魚介類を入れて作っていたことになります。

バレンシア市から少し南に行くと稲作地帯が広がる

バレンシア市から少し南に行くと稲作地帯が広がる

パエリアは休日のランチ。夜には食べない

パエリアは基本的には休日の昼間に家族や仲間で囲む料理であり、夜には食べません。パエリア上手な男友達に、「あなたにとってパエリアとは?」と尋ねると、「フィエスタ!」と返事がかえってきました。家でもレストランでもいい。みんなでわいわい楽しく囲むのがパエリアなのだそうです。確かに「今週の日曜日にパエリアつくるからおいで」と誘われると、単に食事に招かれた以上のワクワク感があります。

大きな鍋はキッチンのガス台では使えないので、パエリア用ガスコンロを持つ家庭が多い

大きな鍋はキッチンのガス台では使えないので、パエリア用ガスコンロを持つ家庭が多い

外でパエリアを炊くときに活躍するのが男性です。バレンシアの男性は、ほかの料理は作らないのにパエリアだけは上手な人が多く、家庭によっては、パエリアはお父さんの味なのです。

パエリアはお父さんの味

男女問わず、パエリアにはそれぞれに作り方のポリシーなるものがあるそうで、パエリアは1人で作るものだといいます。2人以上で作ると、おいしくできないのだとか。お米の量は鍋に薄めで、香ばしく程よいお焦げが望まれます。確かに、お米の量が多いと味が変わります。

オレンジの薪でパエリアを炊く老舗レストラン

さて、ここからは「バレンシアで本場のパエリアが食べてみたい!」と思った方への情報です。

個人宅にお呼ばれしてその家庭のパエリアを食べるのがベストですが、観光客にはハードルが高いですね。よって、まずはバレンシア市内でおいしいパエリアを食べられるレストランを紹介しましょう。中心地から7㎞ほど離れたビーチのすぐ近くにあるCasa Carmela(カサ・カルメラ http://www.casa-carmela.com/es/)です。市内では珍しく、昔ながらに薪を焚いてパエリアをつくっています。薪もバレンシアらしくオレンジの木を使う伝統派。漁師の町だったこの地に店を開き、あと数年で100周年を迎える老舗です。

写真提供:Casa Carmela

写真提供:Casa Carmela

写真提供:Casa Carmela

写真提供:Casa Carmela

また、パエリアの発祥地といわれるアルブフェラ湖畔には、El Palmar(エル・パルマール)という小さな町があります。人口800人に満たない町ながら、30軒近い米料理レストランがある“パエリア村”として有名なのです。田んぼも見えるのどかな町でパエリアを食べた後は、ぜひ観光ボートでアルブフェラ湖遊覧を。

エル・パルマールの水路沿いに並ぶテラス席

エル・パルマールの水路沿いに並ぶテラス席

バレンシアでパエリア作りをマスターする

いや、どうせなら自分で作れるようになりたいという方にオススメするのは、Escuela de Arroces y Paella Valenciana(https://escueladearrocesypaellas.com/)、“米料理とバレンシア風パエリアスクール”。先生と中央市場に食材を買い出しに行った後、バレンシア風、魚介、野菜のいずれか希望するパエリアの作り方を教わることができます(英語クラスもあり)。本場で覚えて帰り、日本でおいしいパエリアを作ったら感心されること間違いなし! その際にはここに書いてあるうんちくも一緒にご披露あれ。

写真提供:Escuela de Arroces y Paella Valenciana

写真提供:Escuela de Arroces y Paella Valenciana

文・写真/田川敬子(スペイン在住)
2002年よりスペイン在住。オリーブオイル専門家としてスペインと日本で活動するかたわら、ライターとしてスペイン情報も発信。海外書き人クラブ所属(http://www.kaigaikakibito.com/)。

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