文・写真/藤木 香(カナダ在住ライター)
いつかこの目で本物のカリブー(トナカイ)を見てみたい。そんな夢を叶えてくれる場所が、カナダ・ケベック州のサファリパーク『オメガパーク』です。
オメガパークはモントリオールから車で1.5時間ほどの小さな田舎町モンテベロにあります。真冬にはしばしば−30℃にも達する極寒のサファリでは、日本では耳慣れない、北国に生きる動物たちが半野生で暮らしています。約890ヘクタール(東京ドーム約17.5倍)の広大な土地の自然地形を利用して作られているこのパークは、美しい紅葉で有名なメープル街道沿いに位置しており、秋の紅葉狩りにもってこいのスポットです。
パーク内は、約15kmのルートを自家用車または専用バス(運行は時期・人数による)で回ります。所要時間は約1.5時間です。今回は、自家用車で乗り入れてみましょう。
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いざ見学ルートへと乗り入れた途端、「待ってました」とばかりにドーンと車の前に立ちはだかったのはワピティ(アメリカアカシカ)。成熟したオスは1.4m 程にもなる、世界で2番目に大きなシカ類です。
ワピティの目当てはニンジン。パーク内では、危険な動物を除くほとんどの動物に、餌としてニンジンを与えることができます(ニンジンは市販品で可)。甘いニンジンが大好きなワピティは、窓を舐め回して催促してきます。
シカ類の餌やりで注意が必要なのは秋の繁殖期。気が立っていて非常に攻撃的で危険なため、この時期だけはツノのあるシカの側で窓を開けてはいけないとのこと。しかし、こんな重要な注意も入口でスタッフからサラッとひと言告げられるだけなのだから、驚きます。あくまで自己責任。これがカナダ流、でしょうか。
ホッキョクオオカミにも出会えます。彼らの前を車でゆっくり進んで行くと、ほんの数メートル先をついてきます。野生の習性を垣間見て、ゾッとする瞬間です。ちなみに、ほんとうに接近しすぎると危険とみなされている動物たちは、網の囲いの向こう側にいますので、ご安心を。
草原地帯で待ち受けているのはバッファロー(アメリカンバイソン)。大きな個体だと重さ1tにもなる、地球上で最も巨大な偶蹄類です。草食動物とはいえ、体当たりされたら車ごと吹っ飛ばされる可能性も。ゆっくりと側を通り過ぎるだけでも、その迫力に心臓が高鳴ります。
かつては北米中に数千万頭もいたバッファローですが、西部開拓が進むなか、商業販売を目的とした食肉や毛皮の過剰狩猟により、1900年代初頭には千頭ほどまでに激減。現在、(半)野生個体はオメガパークのような保護環境の下に3万頭前後が生息しているとされています。
氷河時代をも生き抜いてきたジャコウウシは、現在はカナダ北西部などの−40℃にも達する北極地方を住処としています。その分厚い毛皮は羊毛の8倍も暖かいというから驚きです。
こちらは世界一大きなシカ類・ムース(ヘラジカ)。立派なツノを含めた身長は1.8m、体重は800kgにも及ぶこともあるゴツい体格とは裏腹に、極めて温厚な性格の持ち主で、猫より大人しいと言われることも。
春先には、長い冬眠から覚めたブラックベアがモコモコとしたお尻を振りながら歩く姿が見られます。
6月頃には、南方から戻ってきたカナダグースの集団子育て風景を目にするチャンスもあるかもしれません。青々とした新緑をバックに、池のほとりを親子で散歩するその様は美しく、感動的でさえあります。
ホッキョクギツネは、現在では北極のみならず、アイスランドやロシア、カナダにも生息しています。フカフカの毛皮に愛くるしさを覚えますが、よく見ると目は肉食動物のそれ。野ウサギや鳥などが好物です。
秋にはパーク一面が紅葉し、日ごとに色合いを変えて行きます。広大な敷地内の植生は場所ごとに異なり、鮮やかな赤やオレンジからシックな黄色まで、一つとして同じ景色はありません。
以上、今回はカナダ・ケベック州のサファリパーク『オメガパーク』で出会える動物たちをご紹介しました。
ここでご紹介した種以外にも、まだまだたくさんの動物たちがパーク内に暮らしています。四季折々で刻々と移りゆく景色や動物たちに魅了され、自然・動物愛好家のカメラマンたちが足繁く通う場所でもあるオメガパーク。カナダの大自然と動物の両方を堪能したい方には、ぜひとも一度は訪れて頂きたい場所です。
●オメガパーク (OMEGA Park)
住所:399 Road 323 North, Montebello, Quebec J0V 1L0 CANADA
電話番号:819 423-5487
Website:http://parcomega.ca/
※モントリオール 市内の宿泊施設を観光拠点としつつ、レンタカー、又は旅行会社のバスツアを利用して日帰りで訪れるのが一般的です。
文・写真/藤木 香
2015年よりカナダ・モントリオール在住。海外関連記事執筆やコーディネーターとして活動中。米大学院で環境学修士号取得。美しいカナダの自然の様子を伝えるべく、現在本格的に写真の勉強中。海外書き人クラブ所属。