文・写真/りんみゆき(香港在住)

香港(ホンコン)と聞くと、高層ビルが建ち並ぶ光景、またはショッピングモールの熱気と喧噪を思い浮かべるのではないだろうか。でも実は、香港は総面積約1104km(東京都の総面積の約半分)のうち約7割が山林で占められており、自然に非常に恵まれているのだ。

また、そもそも香港は香港島やランタオ島をはじめ、235もの島からできていることもあまり知られていないだろう。

今回はそんな香港の離島の中から、香港人にも大人気の「グルメと自然の島」ラマ島についてご紹介しよう。

ラマ島について

のどかな漁村の風景が広がる

ラマ島は広さ13.6平方キロメートルあり、香港ではランタオ島、香港島に次いで3番目に大きい島だ。ラマ島は漢字で書くと「南丫島」と表記される。真ん中の字はアルファベットのYに見えるが、れっきとした漢字である。実は、香港で最初に人間が定住しはじめたのはこの島だとも言われている。

島にはゆっくりとした時間が流れる漁村やビーチがあり、香港人にとっては大人気の週末のお出かけスポットとなっている。都会の喧騒から離れて島に住む在港の欧米人も多い。「男たちの挽歌」で日本でもお馴染みの香港の人気俳優、周潤發(チョウ・ユンファ)もこの島の出身だ。

フェリーに乗ってラマ島へ

行先により入り口が違う

香港の各離島へは、セントラルにある埠頭からフェリーが運航している。島にもよるが、1時間もあればどこにでも行けると考えて相違ない。1963年から運航されるようになったラマ島へのフェリーの乗船時間は30分。4番埠頭からは島北西部の溶樹湾(ヨンシーワン)行きと、中央部の索罟湾(ソッグワン)行きのフェリーが出ている。どちらの埠頭からもレストランやビーチへのアクセスはあるが、索罟湾(ソッグワン)はフェリーを降りてすぐに海鮮料理レストランが並んでいる。

ハイキングを楽しんでから海鮮料理を食べるには溶樹湾(ヨンシーワン)行きに乗り、索罟湾(ソッグワン)からセントラル行きのフェリーに乗って帰るのがポピュラーなルートだ。

フェリーは2階部分もあり、運賃が平日と休日で変わる。フェリー乗り場に島全体の地図の案内があるので、それを参考にその日の計画を立てるのもいいだろう。フェリー乗り場にはキオスクがあり、スナックや飲み物を持ち込む人もいる。

名物の新鮮な海鮮料理を楽しむ

オープンエアのレストラン

索罟湾(ソッグワン)でフェリーを降りるとまず目に入ってくるのはウォーターフロントに並ぶ海鮮料理のレストラン。香港人の間でも安くて新鮮でおいしい海鮮料理はラマ島の名物。レストランによってはセントラルへの無料送迎ボートを用意していることもある。

ビールと揚げイカは絶妙の組み合わせ

人気メニューの蒸しエビ

レストラン前に並ぶいけすの中には魚や海老、貝やシャコとなんでもあり。値段交渉をしながら選び、調理法を伝える。値段交渉が苦手という人は値段が書いてあるメニューから好きな物を選んでオーダーすることもできる。マーケットプライス(時価)と書かれてある料理は、会計をする時に驚かないよう、事前に値段を確認しておきたい。

海風を感じながらいただく新鮮なお料理はどれも美味しく、幸せな時間を過ごせることは間違いない。

ハイキングコースも充実

パビリオンからの眺め

1時間で歩けるファミリーハイキングコースはそれほどアップダウンもなく、ちょうどいいくらいの運動量で、家族連れに人気がある。途中のパビリオンからはランタオ島やチェンチャウ島も見渡せる。

ハイキングトレイルはコンクリートで整備されており、トイレもあるので快適だ。自動販売機もあるが、水などの飲み物は歩きはじめる前に買っておいた方がいい。夏は温度も湿度もかなり上がるので、休みながら景色を楽しみながら歩くといいだろう。

南国情緒溢れるのんびりビーチ

平日は人がいない洪聖爺(ホンシンイエー)ビーチ

ラマ島にビーチは3つある。ファミリーコースからたどり着けるのは蘆鬚城(ローソーシン)と 洪聖爺(ホンシンイエー)の2つだ。両方とも更衣室とシャワーがついているので快適に過ごせる。

夏場の週末は家族連れでにぎわうが、平日はほとんど人がおらず、この景色を独り占めすることができる。日陰もあるため、長居ができる。読書をしながら贅沢な午後のひとときを楽しんではいかがだろう。

リュウグウノツカイがいる天后廟(ティンハウミュウ)

海に面している場所には、地元の漁師たちが漁へ出る前に、海の守護神である天后に豊漁と安全を祈願する天后廟(ティンハウミュウ)がある。150年前に建てられたこの天后廟は2005年に火災にあい、改修された。

ここには2001年にラマ島の海峡で発見されたリュウグウノツカイの標本が展示されている。旧暦の4カ月目の18日目には毎年お祭りがあるので、タイミングをあわせて体験してみるのもいい。

日本軍統治時代の歴史の跡

説明ボードがないと見過ごすほどひっそりとある洞窟

1941年12月から3年8カ月の間日本軍の統治下であった香港では、現在でもあちこちでその跡をみることができる。索罟湾(ソッグワン)の海岸沿いには幅10メートルくらい、深さ数十メートルの地元の人は神風洞窟とよんでいる洞窟がいくつかある。第二次世界大戦中、ここは日本海軍の基地となり、数千人の兵隊がここに駐留していた。この洞窟にスピードボートを隠し、近づく敵の戦艦に向かって特攻する計画をしていたが、それを行う前に終戦になったため実際に使われることはなかったという。

*  *  *

以上、今回は香港の離島「ラマ島」の見どころについてご紹介した。今回紹介したのはほんの一部にすぎない。香港旅行の際には、時間をつくってぜひ離島にも足を運んでもらいたい。

文・写真/りんみゆき(香港在住)
1994年より香港在住。雑誌、機内誌、情報誌の寄稿多数。「台湾・香港deワーキングホリデー」共著。オールアバウト香港ガイド、エイビーロード家族旅行ガイド、地球の歩き方香港特派員などのトラベルライター。海外書き人クラブ会員

 

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