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【京都 美の鑑賞歩き】 第8回~東寺五重塔と講堂の立体曼荼羅をあらゆる角度から鑑賞できる

国宝五重塔 内陣(東寺)
東寺五重塔の初層内陣。中央に見えるのが国宝の不空成就如来(写真提供/京都古文化保存協会)。


京都では毎年春と秋に、通常は非公開の国宝や重要文化財を含む仏像や建築、絵画、庭園などが「特別公開」される。この催しは、「京都非公開文化財特別公開」と呼ばれ、この秋で通算68回を数える。今回は市内の20社寺などで開催されているので、京都を訪れた際はぜひ、普段見ることのできない「伝統の美」の数々にふれてみたい。

京都のシンボル、東寺の五重塔。新幹線の窓からこの五重塔が見えると、京都人は「ああ、また京都に帰ってきた」と安堵するという。高さは約55m、現存する木造の塔としては一番の高さを誇る。創建以来4度も焼失し、現在の塔は寛永21年(1644)の再建である。

塔の中心には、心柱(しんばしら)という長い柱が立つ。そして、その下にお釈迦さんの骨である仏舎利(ぶっしゃり)を納めている。寺伝によれば、その骨は東寺の伽藍(がらん)を完成させた弘法大師空海が中国から持ち帰ったものだという。

五重塔の内陣(内部)はどうなっているのか――。奈良・法隆寺五重塔の初層には、お釈迦さんの入滅(にゅうめつ)の様子や、お釈迦さんの弟子で大富豪だった維摩居士(ゆいまこじ)の説法などが粘土で造られている。

一方、東寺の五重塔は、中央の心柱を大日如来(だいにちにょらい)に見立てている。大日如来は密教の中心となる仏。そして、その四方に4体の仏像を配置する。仏が安置された方位と仏像の名前は次の通り。

東側=阿閦如来(あしゅくにょらい)
南側=宝生如来(ほうしょうにょらい)
西側=阿弥陀如来(あみだにょらい)
北側=不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)

阿弥陀如来以外は馴染みのない名称かもしれない。いずれも空海が中国から伝えた密教の教えに基づく仏である。中央の大日如来を含めた5体を「五智如来」(ごちにょらい)という。五智というのは、仏が備えている5つの智恵のこと。つまり、この5体で宇宙の四方天地を守護しているというわけだ。

密教の教えではこの大宇宙を球体ととらえ、それを曼荼羅(まんだら)と名付けた。球体はふたつの半円形から成り立つ。そこで密教では一方を「金剛界」(こんごうかい)、他方を「胎蔵界」(たいぞうかい)と表現し、ふたつを合わせて「両界曼荼羅」と呼ぶ。

ちなみに東寺五重塔の五智如来は、金剛界曼荼羅の仏たちである。ほかに菩薩像(ぼさつぞう)も安置され、さらに壁面にも多くの仏が描かれており、狭い塔内はまさに立体曼陀羅の世界である。

講堂の須弥壇を周回する

東寺では講堂も特別公開されている。講堂の須弥壇(しゅみだん)上には、五大明王など21体の密教の仏像が安置されている。それは空海が構想した、仏像による立体曼陀羅の世界である。

通常、須弥壇の背後は立ち入れないが、特別公開の期間中に限って檀をぐるりと周回できる。空海の教えに近づける、またとない機会である。

 

東寺
住所/京都市南区九条1
公開期間/五重塔:10月30日(金)~11月25日(水)
公開時間/9:00~16:00(受付終了)
拝観料/800円
URL/http://www.toji.or.jp/
問い合わせ先/075-754-0120(京都古文化保存協会)

 

文/田中昭三
京都大学文学部卒。編集者を経てフリーに。日本の伝統文化の取材・執筆にあたる。『サライの「日本庭園」完全ガイド』(小学館)、『入江泰吉と歩く大和路仏像巡礼』(ウエッジ)、『江戸東京の庭園散歩』(JTBパブリッシング)ほか。

 

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