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【京都 美の鑑賞歩き】 第4回~国宝の知恩院三門に上り、宝冠阿弥陀像と狩野探幽による雄壮な天井画を鑑賞する

知恩院1 (知恩院三門)国宝 三門外観
国宝に指定されている雄壮な知恩院三門。使われている瓦の数は約3万枚にのぼる。


京都では毎年春と秋に、通常は非公開の国宝や重要文化財を含む仏像や建築、絵画、庭園などが「特別公開」される。この催しは、「京都非公開文化財特別公開」と呼ばれ、この秋で通算68回を数える。今回は市内の20社寺などで開催されるので、京都を訪れた際はぜひ、普段見ることのできない「伝統の美」
の数々にふれてみてはいかがだろう。

雄大な禅宗様式の三門

京都市の東側に連なる東山36峰、その第21峰を「華頂山」(かちょうざん)という。山の麓には浄土宗総本山知恩院(ちおんいん)の伽藍(がらん)が立ち並ぶ。今回訪れるのは、その知恩院の三門(国宝)である。三門は本来「山門」と書く。中国古代の寺院は多くが山深い地にあり、その入口を山門と呼んだからだ。それが三門と記されるようになったのは、禅の影響による。

禅の教えでは、悟りの境地に達するために3つの段階を経なければならない。その3つの段階は、門にたとえて空門(くうもん)・無相門(むそうもん)・無願門(むがんもん)という。したがって、悟りの象徴である本堂にお参りするためには、この三門をくぐらなければならないというわけである。

京都の東山山麓には2棟の大きな三門が存在する。ひとつは南禅寺の三門。かの石川五右衛門が楼上から「絶景かな、絶景かな」と感嘆したという大きな門である。もうひとつが、この知恩院の三門だ。しかし、知恩院は名僧・法然(ほうねん)が開いた浄土宗の寺院である。禅宗とは違うはずだ。なぜ、知恩院に巨大な三門があるのか?

この三門は元和7年(1621)、徳川2代将軍・秀忠(ひでただ)により建立された。徳川幕府が盤石な基礎を築こうとする時期である。そこで秀忠は徳川家の権威を世に示すために、あえて禅宗様式の雄大にして骨太な門をここに建立したともいわれている。もちろん法然の教えがこの三門に劣らず広大無辺であることは、秀忠もよく知っていたことであろう。

知恩院の三門は山の傾斜地に立つ。我が国最大級となる2階建ての二重門で、正面が約50m、高さは約24m。参道の石段下から見上げると、実際以上に大きく見える。晴れた日には、上層に架かる扁額「華頂山」が金色に輝く。宝永7年(1710)、霊元上皇(れいげんじょうこう)による宸筆(直筆)である。

この山門をくぐり、ふたたび石段を上れば、大きな堂が目の前にそびえ立つ。法然上人像を安置する御影堂(みえどう)である。こちらは徳川3代家光の寄進で、浄土宗の総本山にふさわしい偉容を誇っている。

天井に描かれた極楽浄土の世界

知恩院2 (知恩院三門)国宝 三門二層内部
三門2層内部に安置される宝冠釈迦如来と、天井に描かれた狩野探幽による龍の名画。

さっそく三門の2層に上がってみよう。日本各地の寺院巡りをしても、これほど大規模な三門に上がることのできる機会はめったにない。

急な階段を上り中に入ると、まずその広さに驚かされる。明りは窓から射しこむ自然光のみ。目を凝らすと、仏像や天井画が何とも鮮やかだ。長い須弥壇(しゅみだん)には多くの仏像が並ぶ。中央に坐すのは国の重要文化財に指定されている宝冠釈迦如来(ほうかんしゃかにょらい)。お釈迦さんの像は悟りを開いた姿を表しているので、本来は衣(ころも)だけの質素な姿に造る。しかし、禅宗系統では、頭上に宝冠をかぶった像を祀(まつ)ることが多い。

宝冠釈迦如来の左右には、善財童子(ぜんざいどうじ)と須達長者(しゅだつちょうじゃ)、さらに十六羅漢(国指定の重要文化財)が並ぶ。善財童子は仏法を求めて53人の名僧や知識人を訪ね歩いた菩薩である。東海道五十三次は、この53人に由来するという説がある。一方、須達長者はお釈迦さんに帰依し、祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)と名付けた僧房を寄進した富豪だ。いわば釈迦の応援団のひとりである。

天井や梁に目を向けると、そこには色鮮やかな天女や飛龍、花々が描かれており、極楽浄土の世界が表現されている。作者は、当時、江戸幕府の御用絵師だった巨匠・狩野探幽(かのうたんゆう)とその一派である。龍はすでに紀元前の古代中国王朝の記録に登場し、あらゆる動物のトップとして君臨。中国皇帝のシンボルともなった。いまでは中国国家の力の象徴でもある。

ところで、龍の爪は本来5本だが、日本の龍のほとんどが3本である。2本減ってしまったのはどうしてか。5本の龍は中国皇帝のみに許されたからとか、日本に龍が伝わった隋や唐の時代、中国では3本が主流だったなど諸説ある。

龍に興味のある人には、京都の禅宗の本山巡りをおすすめしたい。一般寺院の本堂にあたる法堂(はっとう)の天井には、迫力満点の雲龍図が描かれている。現代画家の作品もあり、狩野派の龍と見比べると、さらに興味が増すに違いない。

 

知恩院
住所/京都市東山区林下(りんか)町400
公開期間/10月30日(金)~11月8日(日)
公開時間/9:00~16:00(受付終了)
拝観料/800円
URL:http://www.chion-in.or.jp/
問い合わせ先/075-754-0120(京都古文化保存協会)

 

文/田中昭三
編集者を経てフリーに。日本の伝統文化の取材・執筆にあたる。『サライの「日本庭園」完全ガイド』(小学館)、『入江泰吉と歩く大和路仏像巡礼』(ウエッジ)、『江戸東京の庭園散歩』(JTBパブリッシング)ほか。

 

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