写真・文/石津祐介
亜熱帯雨林の森で出会う希少な生き物たち
鹿児島県の南西、九州と沖縄の間に位置する奄美群島。徳之島や沖永良部島など大小8つの有人島から成り、その中で最も大きな面積を有する奄美大島には、世界的にも希少な固有種が数多く生息している事で知られている。
東京からは空路で約2時間、鹿児島市からは約370km離れた奄美大島。亜熱帯海洋性気候に属しており、黒潮の影響もあり年間を通じて温暖多湿で、年間の平均気温は20度、年間降水量は3,000mmと多雨地帯となっている。
島の北部はなだらかな地形で、海岸には美しい砂浜が広がっておりリゾート地としても人気が高い。一方、南部は山岳地帯となっており国内最大規模の亜熱帯雨林が広がっている。内陸部には希少な動植物が生息している。
奄美大島には国の天然記念物であるアマミノクロウサギなど、動物は29種類、植物は124種類と多くの固有種が生息している。これほど多くの種がいるのには、奄美群島の成立が深く関わっている。
奄美群島を含む南西諸島は、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境に位置しており、激しい地殻変動によって大陸と分離、結合を繰り返してきた。その結果、大陸からやって来た動物は島に取り残されてしまった。そして長い年月をかけ、独自の進化を遂げ固有種となっていったという。
奄美群島は大陸から隔離された期間が長く、日本本土やユーラシア大陸では既に絶滅した固有種が未だ多く生息しており、今も隆起し続けるサンゴ礁段丘やカルスト地形、北限に位置するサンゴ礁やマングローブなど世界的にも希少な自然環境を構成している。
政府は、これらの地域の世界自然遺産登録を目指し、平成29年2月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界遺産登録の推薦書をユネスコ世界遺産センターに提出。そして、登録の前提として奄美群島は平成29年3月7日に、国内34ヶ所目の国立公園に指定された。しかし、平成30年3月にはUCNから「登録延期」勧告が出され、推薦はいったん取り下げられることになった。
美しい海と豊かな森がある奄美大島。残念ながら世界自然遺産への登録は成らなかったが、その魅力はいささかも衰える事はない。ぜひ、その魅力を確かめに島へ足を運んでほしい。
写真・文/石津祐介
ライター兼カメラマン。埼玉県飯能市で田舎暮らし中。航空機、野鳥、アウトドア、温泉などを中心に撮影、取材、執筆を行う。