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やんばる(沖縄県)|多様な生命を育む原始の森へ【未来に残したい日本の原風景2】

写真・文/石津祐介

沖縄の北部に広がる原始の森「やんばる」

南国、沖縄と聞いて、想像するのはビーチリゾートや独特の琉球文化だろうか。海の印象が強く、あまり山のイメージは湧いてこないかもしれない。

沖縄本島の中南部は隆起したサンゴ礁からなる小高い丘陵地帯だが、島の北部は山々が連なり深い森が広がっている。そこには多様な生態系を持つ手つかずの原始の森「やんばる」が広がっており、数多くの希少な固有種が生息しているのだ。

まるでブロッコリーが集まったかのように見えるイタジイの森

沖縄の北部に広がる「やんばる」。そこは亜熱帯の植物が多く育ち、さまざまな生きものが暮らす、まさに原始の森。やんばるにそびえ立ち、沖縄本島の最高峰である与那覇岳周辺は、年中多くの霧が立ち混んでおり、大気中に水分が多く含まれ湿度が高く保たれていることから、コケ類が多く見られ、山の周辺はイタジイなどの照葉樹林に覆われている。

そして沖縄本島最北部に位置する国頭村(くにがみそん)は、実に村の面積の9割が森林で、与那覇岳以外に、伊湯岳、西銘岳の山々が連なっている。那覇へとつながる国道58号線が途切れる奥集落は、昭和28年に国道が開通するまでは住民は船で往来していたという。

また琉球王朝時代から近年まで、やんばるの森の木々は建築用資材などの木材として重宝され、「やんばる船」と呼ばれる交易船で那覇や首里など本島中南部へと運ばれ、交易が盛んであったという。

本土最北端、辺戸岬。背後に見える山は大石林山(だいせきりんざん)。

■原始の森が多様な命を育む

やんばるの固有種として、よく知られているのは1981年に新種に認定された「ヤンバルクイナ」だろう。

ヤンバルクイナは、国の天然記念物に指定されており、ツル目、クイナ科に属し全長は約35センチ。体重は350〜450グラムで主にミミズや昆虫、木の実や種を主食としている。赤いくちばしと胸から腹にかけての縞模様が特徴で、羽は小さく飛ぶことはほとんどできず、夜は木の上で寝ている。実は新種といっても、以前から地元では認識はされていたようで「アガチ(せかせか歩く)」「ヤマドゥイ(山鳥)」、「シジャドウイ」と呼ばれていたようだ。

森林の開発や交通事故、ハブの駆除で持ち込まれたマングースや野生化した飼い猫ネコに捕食される被害も多く、2013年に行われた調査によると、生息数は約1,500羽ほど。環境省レッドリストには、絶滅寸前の絶滅危惧IA類として記載されており、国や自治体は保護に取り組んでいる。

1981年に新種として発見された飛べない鳥「ヤンバルクイナ」

やんばるには、ヤンバルクイナ以外にもキツツキの仲間「ノグチゲラ」やコマドリの仲間「ホントウアカヒゲ」など、共に天然記念物で環境所レッドリストにも記載されいている貴重な固有種の野鳥が生息している。

「ノグチゲラ」は沖縄県の県鳥で、1977年には特別天然記念物に指定された。「ホントウアカヒゲ」は「アカヒゲ」の亜種で、主にやんばる地域に生息している。14センチの小さな鳥で、さえずりの美しい野鳥だ。

国の特別天然記念物に指定されている「ノグチゲラ」

やんばるに住むアカヒゲの亜種、「ホントウアカヒゲ」

日本国内では最大級の広がりを持つ、常緑の照葉樹林が広がるやんばるの森。日本最大のシダ植物で食用にもなる「ヒカゲヘゴ」や、木材にも使われ高さ15m以上にもなる「イタジイ」などが見られ、やんばるの固有種であるノボタンの仲間など美しい花も多く咲いている。

「ヒカゲヘゴ」の新芽は、天ぷらや酢の物にして食べられる

ノボタンの仲間、「コバノミヤマノボタン」はやんばるの固有種

那覇市内から最も離れた国頭村は、陸の孤島と言われたその立地から、古い沖縄の姿を色濃く残している。沖縄に行くことがあれば、やんばるの森と共に訪れてみてはどうだろうか。

【国頭村へのアクセス】
自動車:那覇市内から沖縄自動車道(那覇IC~許田IC)を経て、国道58号線を国頭村方面へ
バス:高速バス 那覇空港~那覇バスターミナル~名護バスターミナル 路線バス67番 名護バスターミナル~辺土名 辺土名から先は、村営バス利用

※国頭村へ行くには那覇から車で2時間以上かかるため、訪れる場合はスケジュールは丸1日見ておいたほうがいい。やんばるを十分に楽しむには、ガイド付きの各種ツアーへ参加するのがいいだろう。また、ヤンバルクイナについて知りたければ、生態展示学習施設「クイナの森」で観察することもできる。そして、やんばるを肌で感じたいなら与那覇岳へのトレッキングもおすすめだ。

写真・文/石津祐介
ライター兼カメラマン。埼玉県飯能市で田舎暮らし中。航空機、野鳥、アウトドア、温泉などを中心に撮影、取材、執筆を行う。
 

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