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音楽と芸術の都ウィーンにある小さなユニーク博物館3つ

文・写真/御影実(オーストリア在住ライター)

音楽と芸術の都ウィーンは、50以上のミュージアムがある“博物館の都”でもあります。世界三大美術館に数えられる美術史美術館だけでなく、馬車や時計、葬儀に関するものまで、ありとあらゆる分野の博物館があり、歴史や専門知識を学ぶことができます。

その中でも今回ご紹介するのは、いわゆるマイナー博物館。街の知られざる歴史や、ハプスブルク家のコレクション、ウィーンゆかりの芸術家のゆかりの地など、それぞれ見どころや楽しみ方もご紹介します。

地球儀博物館

ウィーンには、世界で唯一の地球儀博物館があります。旧市街の王宮からもほど近い、元貴族の宮殿だった建物内にあるこのミュージアムでは、600以上の地球儀のコレクションが所蔵され、うち200個が常設展示されています。

最も古い展示品は16世紀に作られたもので、メルカトル図法でお馴染みのメルカトルの地球儀と天体儀も見ることができます。また、この博物館で最も目を引くのは、17世紀の地球儀作家ヴィンチェンツォ・コロネリがハプスブルク家の皇帝のために作った直径110cmの地球儀です。

地球儀だけでなく、天体儀や惑星儀など、様々な種類の球体地図が所蔵されています。更に、折り畳みできるものや、手のひらに載るほど小さい地球儀など、その種類の多さに驚かされます。

ハプスブルク時代には知と権力の象徴だった地図や地球儀。その知識の髄を集めたこの博物館は、単なる球体地図のコレクションというだけではなく、この国が巨大帝国だったころの国力を感じさせます。

Globenmuseum
Palais Mollard, Herrengasse 9, 1010 Wien
www.onb.ac.at/museen/globenmuseum

ローマ博物館

ハプスブルク家以前の歴史はあまり知られていないオーストリアですが、1~5世紀の間ウィーンは、ローマ人の宿営地として栄えました。「ウィーン」という地名も、ローマ人が名付けた「ヴィンドボナ」という名前からきているほど、ローマ帝国の影響が脈々と残っている町ですが、現在の遺跡はほぼ埋もれてしまっていて、当時の姿をうかがい知ることはほとんどできません。

ローマ帝国はドナウ河右岸を征服し、交通の要所となるウィーンに軍事基地を築きました。皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスが亡くなったのも、このウィーンだと言われています。

ウィーン旧市街の中心部にほど近いホーアー・マルクトにあるローマ博物館は、そんなローマ遺跡や発掘を展示した博物館です。

この博物館の地下一階部分は、ローマ人の暮らしや発掘物、当時の地図の再現などがあり、現在のウィーン旧市街の一部に築かれた防壁の内部には、将校の館や武器庫が築かれていたことがわかります。また、壁の外側には市民の居住区があり、周辺都市を結ぶ道路が整備されていたことも、詳しく展示してあります。

さらに地下二階に進むと、実際に発掘された住居の床暖房や間取りがそのまま展示され、現在の地上部分とのギャップに驚きます。

この博物館を訪れた後で、ウィーンの町を地図片手に歩いてみると、2千年前のローマ人の生活や街並みが身近に感じられ、この街の歴史の古さを一層実感できます。

Römermuseum
Hoher Markt 3, 1010 Wien
www.wienmuseum.at/de/standorte/roemermuseum.htm

演劇博物館

ウィーンはオペラやオペレッタをはじめとする、演劇の歴史が深い町です。国立オペラ座の裏手の好立地に、元貴族の館を改装した演劇博物館があります。ここは、演劇やオペラの歴史に興味がある方だけでなく、世紀末絵画やクラシック音楽好きの方にとっても一見の価値のある博物館です。

17世紀に貴族の館として建築された、バロック様式のファサードを持つ豪華な建物の中に、演劇博物館はあります。優美な入り口ホールや階段が特徴的で、ウィーン会議の際には舞踏会の会場となりました。

この館の主であったロプコヴィッツ公爵家は、ベートーヴェンのパトロンだったことから、この建物の「エロイカの間」では、第三交響曲(「エロイカ」,1804年)と第四交響曲(1807年)がベートーヴェン本人の指揮により初演されたという、音楽史に残る建物でもあります。博物館を見学がてら、天井のフレスコ画が印象的なこの部屋ものぞいてみることができます。

演劇関連の展示物としては、モーツァルトの時代のオペラ座の機構や仕掛け、公演衣装など、オペラファンにとって貴重な資料が揃っています。

またこの博物館には、ウィーンが生んだ世紀末芸術の巨匠、グスタフ・クリムトの「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」という名画が展示されています。

このように、演劇博物館は、演劇やオペラの歴史だけでなく、数々のウィーンゆかりの芸術家の要素が散りばめられた、クラシックファンや美術に興味がある方も見逃せない博物館です。

Theatermuseum
Lobkowitzpl. 2, 1010 Wien
www.theatermuseum.at

*  *  *

以上、ウィーンにある数あるミュージアムの中から、小さいながらも見どころの多い博物館を3つご紹介しました。どの博物館の所蔵する展示物も貴重で、ゆっくり見ていると時間が経つのを忘れてしまいます。

メジャーな観光地だけではなく、ウィーンの隠された歴史や、芸術家ゆかりの地などを巡ってみる一日も、知的好奇心をたっぷりと満たしてくれますね。

文・写真/御影実
オーストリア・ウィーン在住フォトライター。世界45カ国を旅し、『るるぶ』『ララチッタ』(JTB出版社)、阪急交通社など、数々の旅行メディアにオーストリアの情報を提供、寄稿。海外書き人クラブ(http://www.kaigaikakibito.com/)所属。

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