選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

1969年にポーランド人とハンガリー人の両親のもと生まれたピョートル・アンデルシェフスキは、いま最も脂の乗り切った、真に聴くべきピアニストのひとりだ。その彼が2002年から少しずつ続けているモーツァルトのピアノ協奏曲のレコーディングの第3弾『モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番、第27番』がようやく出た。

前作からはすでに10年以上たっているが、待たされただけのことはある、見事なモーツァルトだ。

ヨーロッパ室内管弦楽団ともども、何とつややかで、気品に満ち、優雅な音楽だろう。ささやくような弱音、真珠を転がすような美音、ピアノとオーケストラのまろやかな調和──これらによってアンデルシェフスキは、聴き手を誘引する。

こうしたモーツァルトを日常のなかで楽しむということは、聴き手を“精神の貴族”たらしめてくれる、ということに他ならない。

【今日の一枚】
『モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番、第27番』
ピョートル・アンデルシェフスキ(ピアノ、指揮)ヨーロッパ室内管弦楽団

2017年録音
発売/ワーナーミュージック・ジャパン
問い合わせ:http://www.wmg.jp/
販売価格/2600円

文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2018年6月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

 

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