長崎県と熊本県にまたがる雲仙天草国立公園は日本で最初に指定された国立公園のひとつです。雲仙側は標高1300m級の雲仙岳を中心とし、四季折々の美しさを見せる自然の宝庫です。
雲仙温泉は普賢岳の南に広がる高原に位置しています。水蒸気が噴出し、硫黄のにおいが立ち込める雲仙地獄が温泉地らしい風景を見せています。雲仙地獄には遊歩道が設置され、お糸地獄や大叫喚地獄、雀地獄などと名付けられた30ほどの地獄を巡ることができ、地獄の蒸気で蒸し上げる温泉卵が名物となっています。また、ここは江戸時代初期にキリシタン迫害の場となり、地獄を見下ろす丘の上には十字架が立てられています。
雲仙は明治以降、ヨーロッパや上海に住む外国人の避暑地としてにぎわった歴史も持ちます。昭和初期には外国人観光客誘致の国策として、日本各地に外国人向けのホテルが建てられ、雲仙にもクラシックホテルが立ち、日本初のパブリックゴルフコースなどが建設され、高原リゾートが形成されました。今も異国情緒の雰囲気が漂います。
温泉の泉質は強い酸性の硫黄泉。湿疹や切り傷などに効能があり、硫黄成分が余分な皮脂を取り除き、美白効果もあります。ただし、湯あたりしやすい温泉ですので、長湯は禁物です。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。