全国の源泉数の約3割を占める温泉大国・九州。そのトップ1は別府や湯布院を抱える源泉数4000余数の大分県。2位は鹿児島、そして3位の静岡、4位の北海道に次ぐのが熊本県です。さらに熊本県の約1300の源泉のうち、約半数の源泉が湧いているのが阿蘇地域です。
そんな阿蘇屈指の温泉地が、阿蘇内牧温泉。阿蘇五岳を望み、雄大な外輪山に囲まれた湯の町です。
「町湯」と呼ばれる8軒の共同浴場があり、すべて泉質が異なり、源泉掛け流し。銭湯感覚で湯めぐりが楽しめます。また、約20軒の旅館やホテルも、すべて源泉が異なるそうです。
豊富な湯に恵まれた阿蘇内牧温泉ですが、4月の熊本地震の際に多大な被害を受けました。震度6弱、地盤の隆起や沈下などの影響で温泉の通り道がふさがれ、湯が出なくなってしまったところもありました。
老舗旅館「蘇山郷(そざんきょう)」もそのひとつで、これまで使用していた泉源をあきらめ、新しく温泉を掘り起こし営業を行なっています。
泉質はナトリウム・マグネシウム・カルシウム‐硫酸塩泉。以前より成分濃度も増しているということで、しっとりとした湯は血圧を下げ、鎮痛や疲労回復などに効能があります。
ほかの旅館やホテルも現在はほぼ復旧し、のんびりゆっくり湯浴みが楽しめます。
また、去る10月に阿蘇中岳がおよそ1年ぶりに噴火しましたが、入山規制だけで内牧温泉には影響がないので、ご安心ください。地震による交通規制がありますが、阿蘇は復興へ向け一歩一歩進んでいます。
それを象徴するように「蘇山郷」では屋上に満天の星空を眺めるルーフトップバー(※)を創設し、地域の人や旅行者が交流できる場をつくるためのファンドを立ち上げました。出資を通じて復興を応援する「セキュリテ熊本地震被災地応援ファンド」の第1号です。
被災地に寄り添い、足を運ぶことで復興を応援したいですね。
※「満天の星空」屋上バーファンドの詳細は「蘇山郷」公式サイトをご覧ください
http://www.sozankyo.jp/
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。