取材・文/関屋淳子
文豪・志賀直哉をはじめとする多くの文人墨客が愛した名湯・城崎温泉(きのさきおんせん)。温泉街は大谿川(おおたにがわ)に沿って形成され、宿や飲食店、但馬牛のコロッケや肉まんなどを売る店が並び、そぞろ歩きの観光客で賑わい、いかにも温泉街という風情が漂います。
城崎温泉の名物といえば、外湯めぐり。城崎の外湯巡りは、“宿は客間、道は廊下”という街の方針のもと、気軽に温泉巡りを楽しんでもらおうという昔からのもてなしとして引き継がれています。
7つの外湯は、例えば「一ノ湯」は開運招福、「柳湯」は子宝などのご利益が設けられており、宿泊客は無料で利用することができます。
湯巡りの正装はもちろん、浴衣と下駄。浴衣は宿ごとに洒落たデザインで、浴衣を見ればどの宿の宿泊客かがわかるようになっています。
泉質はナトリウム・カルシウム‐塩化物泉で、さらりとしたお湯。神経痛などに効能があり、よく温まります。飲泉所もあり、癖のない味で、慢性消化器病と慢性便秘に効能があります。
温泉はすべて一括管理され、各宿や外湯に配湯されるシステムです。
創業150年の歴史を誇る老舗宿『西村屋本館』の別館「西村屋ホテル招月庭」は、5万坪の森林庭園を有する緑豊かな宿で、今夏リニューアルオープンとなりました。「森のプライベートスパ」という3か所の貸切露天風呂も用意され、ゆったりとプライベートの時間を過ごすことができる、なんとも心地よい空間です。
毎年11月6日には松葉蟹も解禁。わざわざ出かけていきたい温泉地です。
城崎温泉から車で約30分ほどのところに、国の特別天然記念物のコウノトリを保護増殖し、野生復帰を実践する「兵庫県立コウノトリの郷公園」があります。公演のある兵庫県豊岡市は、コウノトリの飛ぶまちとして知られています。
園内では飼育コウノトリを観察できるほか、野外で生息するコウノトリにも出会えます。ごく自然に共生する人とコウノトリ。里山の美しい自然とともに心が和む風景が広がっています。
さらに城崎温泉からは、但馬の小京都といわれる城下町・出石(いずし)も近く、古い町並みを歩いたり、出石そばという皿そばを味わったりと、楽しみは尽きません。
■西村屋ホテル招月庭
http://nishimuraya.ne.jp/shogetsu/
■城崎温泉観光協会
http://www.kinosaki-spa.gr.jp/
■豊岡観光協会
http://www.toyo-kan.jp/
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。