取材・文/関屋淳子
良質で豊富な湯量を誇ることから九州屈指の名湯として知られる佐賀県南西部の嬉野温泉。江戸時代には長崎街道の宿場町として栄えた歴史もあり、現在も50余軒の温泉宿が並びます。
特筆すべきはなんといっても温泉の良さ。『肥前風土記』(713年)には「東の辺に湯の泉ありて能く、人の病を癒す」と記され、古くからその効用が知られていました。浸かるだけですべすべの肌になれるということから、全国に数ある美肌の湯の筆頭に挙げられています。源泉は17か所あり、泉質は重曹を含むとろりとしたナトリウム‐炭酸水素塩・塩化物泉。弱アルカリ性でしっとりとした湯触り、さらに源泉温度も高く、多くの成分が含まれています。いつまでも入浴していたくなる気持ちよさ。ですが、入浴後はすぐに保湿もお忘れなく。
嬉野温泉といえば、「嬉野温泉湯どうふ」が名物です。温泉水で豆腐をことこと煮込むと、温泉成分で豆腐のたんぱく質が分解され、とろとろに。煮汁は乳白色にかわります。濃厚な大豆の旨みと独特の食感がなんとも言えません。嬉野温泉は飲泉では整腸作用もあることから、この温泉湯豆腐はスーパー健康フード! 疲れた体と心を癒してくれます。来湯の際にはぜひ味わってください。また嬉野温泉にはフッ素も含まれていて、温泉街の住民は歯医者知らずとか。
さらに佐賀牛をはじめ近隣の地野菜や魚、島原のそうめんなど、豊かな九州の幸も楽しんでください。
ここでは嬉野茶を軸にしたティーツーリズムを展開していて、茶畑を巡りお茶を味わうツアーや利き茶会などを行なっています。2019年8月18日~22日には旅館大村屋の湯上り文庫内ティーカウンターで茶師による厳選茶とそれに合わせたお茶請けのサロンが、和多屋別荘では8月25日、26日お茶とスイーツのハイティーが、30日、31日はお茶と料理を堪能する嬉野晩餐会が開催されます。
良質の温泉と湯豆腐、お茶。嬉野温泉に滞在すれば確実に健康に近づけること間違いありません。
旅館大村屋
佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿乙848
電話:0954-43-1234
http://www.oomuraya.co.jp/
和多屋別荘
佐賀県嬉野市嬉野町下宿乙738
電話:0954-42-0210
https://wataya.co.jp/
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。