取材・文/関屋淳子
豪雪地帯で知られる新潟県十日町市。4月に入りようやく春めく長閑な里山です。冬はスキーヤーで賑わう松之山温泉は、美しい棚田やブナ林に囲まれる温泉で、開湯は南北朝時代に遡るといわれています。
傷ついた鷹が羽を休めていたことで発見されたと伝わり、上杉家の隠し湯ともされています。
松之山温泉は、約1200万年前の地下海水がマグマによって温められて湧出する「ジオプレッシャー型」という珍しい温泉。温泉と認められる基準値の15倍もの温泉成分が含まれていることから、草津、有馬と並ぶ日本三大薬湯のひとつとされています。
源泉は92度もの高温で噴出し、豊富に含まれた塩分の作用で体がよく温まり、冷え性に効能があります。消毒・洗浄効果もあり、肌荒れや傷の治癒にも向く湯です。さらに天然の保湿成分であるメタケイ酸が多く含まれ、美肌へと導いてくれます。湯触りのよさ、入浴後のほっこり感は抜群です。
温泉街には10数軒の宿があり、そのひとつ『玉城屋旅館』はソムリエの資格を持つ若旦那が厳選した新潟の日本酒・ワインと越後の地野菜を存分に味わえる宿です。春は山菜をはじめ、四季折々の野菜や、地元ブランドの妻有ポークを温泉熱で低温真空調理した湯治豚、越後の豊かな発酵文化を伝承した酒肴の数々など、いずれも酒杯を重ねたくなるこの土地らしい味。〆はもちろん、炊き立ての魚沼産のコシヒカリを堪能してください。
朝食時には、果物や野菜を低速回転で圧搾することで、ビタミンや酵素を壊すことなく取り入れられるコールドプレスジュースが登場。ちょっと二日酔いでも、体がしっかり目覚めます。
初夏に向かい彩りを増す松之山温泉。美人林と呼ばれるブナ林や稲穂が揺れる棚田を楽しみ、美酒と美食、温泉で癒されてみてはいかがでしょうか。
【今日の湯宿】
松之山温泉『玉城屋旅館』
■住所/新潟県十日町市松之山湯本13
■電話/025-596-2057
■チェックイン15時/チェックアウト10時。全11室。
■泉質/ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(高張性弱アルカリ性高温泉)
■ウェブサイト/http://www.tamakiya.com/
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。