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取材・文/末原美裕

チリン、チリン。暑い夏の日、風に呼応した風鈴の音は涼を運び、暑さで疲れた体を軽くしてくれるかのように感じますが、それは気休めとかそういうものではないのかもしれません。

「夏の風物詩としておなじみの風鈴ですが、もともとはお寺の軒先に吊るす風鐸(ふうたく)という青銅製の鈴がルーツで、厄除け・魔除けの意味が込められているのです。この音が聞こえる範囲は聖域であることを表し、災いが起こらないと考えられているんですよ」と語るのは、京都・宇治にある「正寿院」副住職の久野村さんです。

宇治駅から車を30~40分ほど走らせたところにある正寿院は、約800年前に創建され、鎌倉時代の仏師・快慶作の不動明王坐像(国指定重要文化財)が祀られているため、地元の人たちからは“快慶のお不動さん”として親しまれています。

ここでは毎年7月1日から9月18日まで「風鈴まつり」が開催されており、境内には約2000個の風鈴が吊るされます。茶畑や山の濃密な緑と夏の青い空を背景に風鈴が優しい音色を響かせ、暑さを払います。

そして、風鈴の音に包まれる境内は、清々しい空気に包まれ、まさしく聖域となっています。

風鈴まつりの期間中は、風鈴に絵付けをして持ち帰ることもできます(体験料1,000円)。構図を考えたり、色彩を整えたりと、ついつい時間を忘れて没頭してしまいます。

正寿院を訪れたなら、ぜひ客殿へ立ち寄ってください。そこには今、ネットで話題になっているハート型の窓があります。

実はこのハート型は「猪目(いのめ)」といって、およそ1400年前から伝わる文様なのです。災いを除き、福を招くという意味合いがあるそうです。

春は桜、夏は萌ゆる緑、秋は紅葉、冬は雪景色、と四季の移り変わりを猪目窓から覗けます。

また、天井には花もしくは日本を感じる風景をモチーフに描かれた絵が160枚並んでいます。100名弱の日本画家と芸大生の手によるもので、制作には5年の月日が費やされています。

20代の芸大生から70代の日本画家までテイストは様々なので、好みの1枚が見つかるはずです。

“則天去私”――小さな私にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きて行く、という言葉から意味をいただいて、この部屋は「則天の間」というそうです。

「宇治田原の茶葉の香り、風鈴の音、鮮やかな色彩……、そういったものを五感で受け取ってみてください。この部屋では畳の上に寝転んでいただいて構いませんよ」と久野村さんは話します。

そのお話の通り、地元の子連れのお母さんたちが子どもたちと一緒に横になりながら寛いでいました。それに倣って横になると、肩の無駄な力が抜け、童心に返ったかのように世界が鮮やかに感じられたのです。

真なる聖地は人里離れたところに隠されている、とよく言いますが、本当にそうなのかもしれません。

【高野山真言宗 正寿院】
■所在地:京都府綴喜郡宇治田原町奥山田川上149
■アクセス:京阪宇治駅・JR宇治駅・近鉄新田辺駅→京阪宇治バス(180、182、184系統どれでも乗車)→維中前下車→コミュニティバス乗車→奥山田下車→徒歩10分
※コミュニティバスの時刻表はこちら
■拝観時間:8時30分~16時30分
※9時~16時30分(風鈴まつり開催時)

■拝観料: 500円(お茶・お菓子・散華・叶紐付き)
■問い合わせ先:電話 0774-88-3601
http://shoujuin.boo.jp/

取材・文/末原美裕

【お知らせ】2018年の「風鈴まつり」は7月1日~9月18日に開催予定(ただし8月17日は伝統行事のため拝観不可)。同期間中の拝観にはチケット購入または往復ハガキによる事前申し込みが必要となります。詳細は正寿院のウェブサイトをご覧ください。 

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