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取材・文/末原美裕

坐禅をすることで心を無にすると、部屋の掃除と同じで、心が整えやすくなります。海外では「メディテーション」として注目度が高く、欧米だけでなくアジアの各都市でも坐禅の施設がいくつも誕生しています。

坐禅のなかでも、日暮れから始まる坐禅を「夜坐(やざ)」と称しますが、京都・東福寺の塔頭「勝林寺」では期間限定で夜坐体験を行っています。今回はその模様をご紹介します。

まずはお寺の拝観から。1550年に創建された勝林寺の本尊・毘沙門天王像は、平安時代中期に作られた一木造りの像で、邪鬼を踏みしめ、左手に舎利塔、右手に三叉戟を持ち、仏法を守るためにいかめしい表情をしています。古来より、子孫繁栄、戦勝、鬼門封じ、金運財運の神として地元の人たちからも慕われています。

脇侍は女性に美と福徳を授けてくれる神の吉祥尊天像と、毘沙門天王と吉祥尊天の御子とされる善膩師童子像です。この三尊は秘仏なので通常非公開ですが、夜坐体験の開催日は特別拝観できます。

左から善膩師童子像、毘沙門天王像、吉祥尊天像。

毘沙門天三尊像が並んでいるお堂は傾斜がついているのが特徴。下は人間世界を表し、参拝する際は神々のいる世界へと駆け上がれるように作られています。

他にも見所は多く、毘沙門堂前堂の左右に描かれた虎の大襖絵は、圧巻です。日本画家 櫟 文峰(あららぎ・ぶんぽう)が1926年に手がけたもので、風に向かって吼える虎は毘沙門天を、睦まじい2頭の虎はその妻子である吉祥天と善膩師童子をそれぞれ象徴すると伝えられています。

今にも襖から出てきそうな迫力を感じつつも、しなやかで豪奢な体つきの虎に思わず見入ってしまいます。

猛々しく、力強い、毘沙門天を想起させる虎。

伏せている虎がもう一頭の虎に甘えている様子が愛らしい。

坐禅に先立って、勝林寺の宇野虓堂(こうどう)住職の講話を拝聴します。「“我欲”は自分自身を苦しめます。坐禅は生まれたままの純真な心を持つ、自分自身に戻してくれるのです」とのお話が心に染みいります。

そしていよいよ坐禅の開始。坐っている間、1から10までを繰り返し数えながら鼻呼吸をすることで、次第に心はそれに集中し、無となっていきます。普段自分を苦しめているのは己の持つ“我”であり、それがなくなることで、素直な自分自身にリセットしてくれるのです。

無駄なことを考える気力も体力もなくなった一日が終わりに向かう時間、薄闇から闇に切り替わる頃、坐禅をするのは“無”になりやすく、理に適っているのかもしれません。

燈明のあかりだけが灯る薄暗闇は、自己に集中させてくれます。

警策(けいさく)で両肩をそれぞれ2回ずつ叩いてもらうと、さらに体に溜まっていた邪が抜けるようですっきりします。

警策を与えてもらう前後には、お互いに合掌をして行われます。

お香の薫りがただよう空間に、心地いい虫の声が響き渡ります。冷房など人工的な涼はなく、始めは暑いですが、坐禅とともに次第に体から余計な熱が抜けていくのがわかります。

坐禅で調身・調心をし、心をコントロールできるようになると、不思議と今まで見えていた世界も変わります。京都の夜、坐禅を通して新しい自分に出会えた気がしました。

【京都の禅寺で坐る 夜坐体験(予約制)】
■場所:東福寺塔頭寺院 勝林寺
■住所:京都市東山区本町15-795
■アクセス:京都駅よりJR奈良線「東福寺」下車 徒歩約8分
■開催日:2017年9月16日(土)・17日(日)・23日(土・祝)17時30分〜19時頃(所要時間1時間30分)
■料金:各日2,500円
■予約・お問い合わせ:京都市観光協会(075−213−1717、9時〜17時)

※京の夏の旅Webサイト:
http://www.kyokanko.or.jp/natsu2017/natsutabi17_03.html#07

取材・文/末原美裕

【参考リンク】
「そうだ 京都、行こう。」サイト
2017年夏特集「テーマでめぐる京都旅 宇治&伏見」
http://souda-kyoto.jp/tokusyu/summer/2017/index.html

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