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高徳院|美男で名高い「鎌倉の大仏さん」を訪ねる【鎌倉名刹紀行4】

文・写真/鈴木拓也

「鎌倉の大仏」で名高い高徳院は、長谷寺から徒歩数分の距離にあり、この地域では長谷寺と並ぶ二大観光名所となっている。

高徳院と言えば、誰もが大仏を連想するだろうが、当地を訪れたなら、まずは入り口の仁王門をご覧になってほしい。これは18世紀に、別の地域からここに移築され、中の仁王像も一緒に運ばれてきたものと考えられている。

高徳院の仁王門

高徳院を護持する一対の仁王像は、塗装が真新しく見えるが、実は2011年10月から2年あまりの月日をかけ修復・再塗装したもの。同年3月の東北大地震のとき、仁王像が激しく揺れて損傷したことを受けての大修復となり、今の姿によみがえった。

高徳院の仁王像

さて、仁王門を通って、拝観受付を済ますと、大仏はすぐそこ。テレビや雑誌で、その姿を見知っているつもりの人でも、大仏像をはじめて見たときは、その大きさと迫力に、なぜか微笑んでしまう。

まさに至宝、「日本三大大仏」のひとつに数えられるだけのことはある。

高徳院の大仏像

観光ガイドではめったに見られない大仏像の後ろ姿

鎌倉大仏像は、触れることができるという点で稀な国宝である。中は空洞になっており、「胎内拝観」として、左脇の入り口から中に入ることができる。

胎内では御尊体に触れることは許されているが、これは奈良の大仏を含め、他の国宝・重要文化財の仏像ではありえないこと。

「掌で得た触覚から、御尊像に対する理解や信心を深める参拝者もおられる」という高徳院住職のはからいである(ただし外面への接触は不可)。

近くの回廊の壁には、巨大な藁草履(長さ1.8m、幅0.9m、重量45kg)がかけられている。

大仏が履ける巨大藁草履

巨大藁草履の奉納は、1951年に「大仏様に日本中を行脚し、万民を幸せにしていただきたい」と願う、茨城県久慈郡(現常陸太田市松栄町)の子供たちによって始められた。この制作活動は、3年に一度行われ、今も続けられている。

大仏像を取り囲む回廊を抜け、境内の奥の方へ進むと見えてくるのが観月堂だ。

山一證券の前身、山一合資会社の杉野喜精社長の私邸にあったのを寄贈・移築したものだが、もとは5世紀中頃に朝鮮王宮内にあったと伝えられる建物である。

中には、江戸後期の作とみられる秘仏、観音菩薩立像が安置されている。

観音菩薩立像が安置される観月堂

余談になるが、高徳院の境内裏手の界隈に、野尻清彦という名の若者が住んでいた。劇作家を目指していたが、関東大震災のせいで呑気なことを言っていられなくなり、生活費を稼ぐために大衆向けの娯楽小説を書くことにした。

この際に思いついたペンネームは、大仏の裏手に住んでいたから「大佛次郎」。

そもそもは劇作家になるまでの当座のペンネームであり、これを50年も使い続けるとは自身も想定していなかったようだが、彼も含め、高徳院は、多くの鎌倉文士にとってゆかりの場所でもあった。そして、数々の俳人・歌人もまた大仏像の前で句を作った。

鎌倉の大仏には、詩文の創作意欲をかきたてる見えない力があるのだろう。大仏を拝観される際は、短冊を携えておくと、一句ひらめくかもしれない。

【高徳院】
住所:鎌倉市長谷4丁目2番28号
電話:0467-22-0703
公式サイト:http://www.kotoku-in.jp/
拝観時間:8:00~17:30(10月~3月は8:00~17:00、受付は16:45まで)
交通:鎌倉駅からバスで「長谷観音」バス停下車徒歩7分。または、江ノ電長谷駅下車徒歩5分/藤沢駅からは、江ノ電「長谷駅」下車徒歩約7分

文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。

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