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築350年の茅葺き民家「鈴木家住宅」の“開かずの間”が開くとき【知られざる秋田・羽後町へ5】

鈴木家住宅の外観。東北地方を中心に日本海側に多くみられる中門造りの代表的な佇まいだ。

文・取材/山内貴範

秋田県羽後町の飯沢地区にある、築350年の歴史を持つ茅葺き民家「鈴木家住宅」。江戸時代初期に完成した主屋は、東北地方でも有数の歴史を持つ民家とされ、主屋と土蔵、さらには土地までもが重要文化財に指定されている。

現在も鈴木家の当主一家が居住する“現役”の民家として貴重な存在だが、この民家には現在も“開かずの間”があるという。第46代当主・鈴木杢之助重廣さんはこう話す。

「その部屋は“バケモノザシキ”といいます。我が家はたびたび増築を重ねているのですが、もっとも古いとされる、主屋の奥にある空間です」

鈴木さんの先祖は、源義経に家来として仕えた鈴木三郎重家とされる。バケモノザシキの起源は、どうやら、祖先に由来する伝説のようだ。

「落ち武者たちをかくまった部屋と言い伝えられています。そもそも、鈴木三郎重家自身が、奥州平泉で義経が敗れたあとに落ち武者となって、羽後町までたどり着いたとされます。そうした縁もあって、たびたび当家を頼って訪れた者が多かったのでしょう」

鈴木さんは決して霊感が強くないそうだが、これまで見学に訪れた人のなかで、“何かいる”と感じた人も少なくないのだとか。

第46代当主・鈴木杢之助重廣さん。囲炉裏を囲みながら、鈴木さんの解説を聞くのも楽しい。

普段は固く閉ざされているバケモノザシキだが、8月13日~15日のお盆の時期に限り、盆供養の一環として特別公開される。内部には神棚が祀られているそうだが、取材陣が訪れたのはお盆以外の時期ということもあって、残念ながら内部を確認できなかった。

バケモノザシキは、障子と襖で仕切られた空間。お盆以外に開けることは当主といえども厳禁だ。

鈴木さん自身、子ども時代に、親から襖をあけてはいけないと言い聞かせられて育ったそうだ。そのため、お盆以外は、当主といえども決して襖をあけることはないという。歴史ある民家ならではのミステリアスな空間といえるだろう。

「鈴木家住宅」主屋は天井がなく、梁がむき出しになっている。天井も高い。

現在の主屋は江戸時代初期の建築だが、修理の際の発掘調査で、江戸以前にこの地に人が居住していたことを物語る陶片などの遺物が発見された。鈴木家の歴史の古さを物語る史料である。

今年も1年に1度の公開日が近づいてきた。いったいどんな部屋なのか。怖いもの見たさで、夏の秋田・羽後町を訪れてみてはいかがだろうか。

※なおこの「鈴木家住宅」では「西馬音内(にしもない)盆踊り」が開催される8月16日~18日に限り、1人5,000円~宿泊が可能。宿泊可能な日はバケモノザシキの公開は行なっていないが、重要文化財の民家は一見の価値があるので、滞在してその空間を堪能したい。詳細については下記へ問合せされたし。

【鈴木家住宅】
所在地:秋田県雄勝郡羽後町飯沢先達沢52
電話:0183-68-2913
営業:9時~17時(居住しているため来場の際は電話予約が望ましい)
休み:不定休
入館料:500円
アクセス:JR湯沢駅からタクシー約40分。公共交通手段はありません。
http://www.suzukike46daime.jp/

文・取材/山内貴範
昭和60年(1985)、秋田県羽後町出身のライター。「サライ」では旅行、建築、鉄道、仏像などの取材を担当。切手、古銭、機械式腕時計などの収集家でもある。

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