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文/鈴木拓也旅に行けない今こそ読みたい古寺巡礼ガイド 『鳥瞰CG・イラストでよくわかる日本の古寺』
京都市産業観光局の観光客統計(2016)によると、京都市への旅行回数は「10回以上」のヘビーリピーターだけでも約6割。4~9回の人も加えると実に9割に及ぶ。そして、旅行者のおよそ8割は、旅行目的として神社仏閣の観光を挙げる。
何回も京都を訪れるというのは、それだけ多くの魅力的な神社仏閣があるからだろう。しかし、1か所を拝観するだけでも、あまりに広い境内と見どころの多さに圧倒され、ハイライトとなる部分を観るだけで手一杯。後ろ髪を引かれる思いで次へ向かうという方が、多いのではないだろうか。

そこで今回おすすめしたい1冊が『鳥瞰CG・イラストでよくわかる日本の古寺』(学研プラス)。副題の『歴史を知って訪れたい名刹74』のとおり、奈良・京都を中心に名刹74寺を、豊富なイラストを交えて解説した1冊だ。

■大寺院の広大な境内の施設を網羅

本書の最大の特徴は、各寺院の境内の施設が、CGイラストによる細密な鳥瞰図で描かれている点。例えば、奈良県の當麻寺(たいまでら)だと、入口にあたる東大門(仁王門)から、金堂・本堂を経て、最奥の浄土庭園まで網羅。国宝の鐘楼や西塔(三重塔)など、特におさえておきたい所は、囲み枠で説明が付されている。

従来の類書だと、本堂を中心とした伽藍の一部だけを描いたものだったり、縮尺が少々アバウトなものが多かったが、本書はその点で抜かりがない。観光客があまり立ち寄らない寺院施設も漏れなく描かれ、旅行前に拝観ルートを練るのにも役立つ。

當麻寺のCGイラスト見開きページ

當麻寺のCGイラスト見開きページ

変わって下の画像は、京都最古の禅寺で臨済宗大本山の建仁寺。法堂(はっとう)と方丈を中心に、その周囲にある多くの塔頭寺院(通常は非公開)までも描かれている。平成時代に作庭された、「〇△□乃庭」(まるさんかくしかくのにわ)にも言及されているのが細かい。また、建仁寺所蔵(京都国立博物館寄託)の知らぬ人なき国宝「風神雷神図屏風」の風神・雷神のイラストも右下に見える。

建仁寺のCGイラスト見開きページ

建仁寺のCGイラスト見開きページ

幾つかの寺院については、一部のエリアを拡大した見開きページを追加して、全4ページ構成となっている。

その1つが、高野山金剛峯寺。最初の見開きページでは、入口の大門から、数キロ先の奥之院までを俯瞰。次の見開きページで、金堂付近の寺院施設をクローズアップし、個々の見どころについて説明がある。

高野山金剛峯寺の拡大CGイラスト見開きページ

高野山金剛峯寺の拡大CGイラスト見開きページ

■知っておきたい知識が詰まったコラムも

本書には、74寺の解説とは別に、合間に6本のコラムが挟まれている。「仏教の宗派」、「仏像の見分け方」、「塔のいろいろ」など、入門者に寄りすぎない程度に基礎知識が織り込まれ、読むことで探訪をより深く味わえる趣向となっている。

コラムの1つ「仏像の見分け方」の見開きページ

コラムの1つ「仏像の見分け方」の見開きページ

*  *  *

古寺を訪れる前準備に寺の公式サイトをチェックしても、意外と取りこぼしはあるもの。境内の全体像を把握できる本書は、帰ってきてから「あそこを見落とした」という後悔をなくす有用なツールとなるだろう。また、感染症の流行で気軽に旅行に行きづらい昨今、読むだけで古寺巡礼した気分に浸れるという点でも、1冊買い求める価値はある。

【今日の教養を高める1冊】
『鳥瞰CG・イラストでよくわかる日本の古寺 歴史を知って訪れたい名刹74』

https://hon.gakken.jp/book/1861157000

(渋谷申博著、中村宣夫・渡部政人・田中ひろみ画、本体1800円+税、学研プラス)

『鳥瞰CG・イラストでよくわかる日本の古寺 歴史を知って訪れたい名刹74』文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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