文・写真/佐竹敦
山形県の小国町に「梅花皮大滝」という滝があります。7段で構成されている段瀑で、総落差は日本の滝の中では二番目に大きい270mとされる超ド級で桁違いのスケールの滝です。
世界百名瀑に選ばれているほどの名瀑なのですが、知名度はほとんどといってよいほどにありません。なぜならば一般の方はおろか、滝好き、滝マニアですらその姿を見たことがある人は皆無に等しいという、まさに『秘瀑中の秘瀑』だからです。
それは、この滝の場所が、なかなかたどり着けない場所にあるからです。飯豊連峰の「梅花皮沢」を登り詰めたところにあるのですが、梅花皮沢を登り詰めるのはプロでも厳しいと言われているほどに難易度が高いのです。
また、梶川屋根の滝見場(滝までの距離1.6キロ)や、倉手山の山頂(滝までの距離約5キロ)から、超望遠でその姿を観ることは可能ですが、梶川屋根の滝見場にしても倉手山の山頂に行くにしても急登が厳しい登山をする必要があるため、やはり一般的ではありません。
さらに、もっと超遠望となってしまいますが、飯豊連峰を一望することができる樽口峠の展望台からも梅花皮大滝の姿を観ることはできます。樽口峠の展望台までは車で行くことができるので訪ねること自体は容易です。
そして、これが樽口峠の展望台から見る飯豊連峰の大パノラマです。しかしこの中に滝があると言われても……。わからないですよね。
少し寄ってみます。実はこの写真の真ん中に梅花皮大滝があるのですが、展望台から滝までの距離は約8キロもあり、わずかに肉眼でギリギリ見える、何とかようやく確認ができるというのみで目を凝らさないと見えません。
超望遠レンズで撮った写真です。辛うじて滝が見えますが、これでは見たというレベルではありませんね。
このように人の目にほとんど触れることがないため、梅花皮大滝は“幻の大滝”とも言われています。
では、どうあってもこの梅花皮大滝を間近から観ることはできないのでしょうか? 実はウルトラCのようなアプローチの仕方があります。それは雪が沢を埋め尽くしている時期に限り、その雪渓を登って滝の近くまで行くという方法です。
こんな道を辿っていきます。
そしてこれが、雪渓を登っていった先の、間近から見た梅花皮大滝の姿です!
ただし該当する時期であっても、様々な条件に恵まれていないと梅花皮大滝まで行くことはできません。また、雪渓というのは並大抵の道ではありません。常に危険と隣り合わせであり、雪渓の危険性を理解しておく経験と知識も要求されますので、誰にも推奨できるアプローチ方法ではありません。
また、たとえ間近まで寄れたとしても、滝はこのように「く」の字のように曲がりながら落ちているためすべての段を観ることができません。
さらに、下流の沢も「逆くの字」となっているため、下流より遡上しているとその立ち位置により見える段が変わってくるのです。実にもどかしいものがあります。
結局のところ、どこから観ても梅花皮大滝の全景を観るのは無理なようです。
それでは最後にこの幻の大滝の動画を紹介します!
このように、日本有数の大瀑布でありながら、一般的にはその姿を観ることができず、どこから観てもその全景を観ることもできないという「梅花皮大滝」は、まさに幻の大滝と呼ばれるにふさわしい、秘瀑中の秘瀑であると言えるでしょう。
文・写真/佐竹敦
日本全国の即身仏・一之宮・五重塔・三重塔・滝百選・棚田百選・国分寺跡をすべて訪ね歩いた一人旅の達人。テレビチャンピオン滝通選手権出場。主な著書に「この滝がすごい!」「日本の滝めぐり」等。テレビ東京の「厳選!いい宿ナビ」のコラム執筆、@nifty温泉の記事執筆等、ライターとしても各メディアで活躍中。