火山列島である日本には、数限りない温泉が湧いています。効能はもちろん、源泉かけ流しや露天風呂の有無など千差万別。あまりにも多すぎて、どこを選べばいいのか悩ましいところです。近頃、ようやく秋が深まり、まもなく紅葉が美しい季節です。せっかくなら紅葉も楽しめる一石二鳥な温泉を選ぶのはどうでしょうか。
そこで今回は『サライ.jp』に掲載された、温泉ソムリエや温泉入浴指導員の資格を持つ関屋淳子さんのコラム「魅惑の温泉案内」から、紅葉が素晴らしい温泉5つをご紹介します。
温泉やお店の営業時間などのデータは変更になっている場合がありますので、ご確認のうえお出かけください。
■1:4種類の源泉を持つ、屈指の人気を誇る秘湯「乳頭温泉」鶴の湯
温泉好きならば一度は訪ねてみたいと言われる秋田県の秘湯、乳頭(にゅうとう)温泉郷のひとつ「鶴の湯」。温泉は4種類の異なる源泉があり、秋田藩主の湯治場だっただけに、警護の武士が詰めた茅葺き屋根の長屋「本陣」などが残り、風情ある佇まいを見せています。
女性専用の露天風呂のほか混浴露天風呂もありますが、入口は男女別で女性も入りやすいように工夫されています。泉質は含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素泉の白いにごり湯なので、混浴初心者にもうってつけ。錦秋の山々に囲まれる入浴はまさに別天地です。
乳頭温泉・鶴の湯|320年以上の歴史ある憧れの露天風呂【魅惑の温泉案内 第1回】
■2:絶景の紅葉と多様な泉質を堪能できる「鳴子温泉郷」
宮城県北部に位置する鳴子(なるこ)温泉郷。陸奥の古湯として知られ、源義経や松尾芭蕉に因む名所、旧跡などが多く残されています。5つの温泉地からなり、源泉数は約400本、多くの宿が自家源泉をもち、様々な泉質があるのも特徴です。
温泉郷の中心地である鳴子温泉の共同浴場のひとつ「滝の湯」は総ヒバ造りの懐かしい雰囲気。周辺には深さ100mに及ぶ大峡谷の鳴子峡があり、10月下旬~11月上旬には絶景の紅葉が楽しめます。
鳴子温泉|絶景の紅葉と湯浴みを堪能できる陸奥の古湯【魅惑の温泉案内 第5回】
■3:紅葉と渓谷のコントラストが美しい「菊池渓谷温泉」
熊本県菊池市、阿蘇外輪山の北西部、標高500~800mに位置する菊池渓谷。菊池川沿いの渓谷は天然の広葉樹と大小さまざまな瀬や渕、滝があり、渓流に映える紅葉が素晴らしいと人気のスポットです。
菊池川源流近くに湧き出ている温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、湯上りはすべすべ、しっとりになる美肌の湯。渓谷沿いにある宿『岩蔵』では源泉かけ流しの湯を存分に楽しむことができます。
菊池渓谷温泉|「日本森林浴の森百選」に選ばれた紅葉の渓谷に湧く温泉【魅惑の温泉案内 第52回】
■4:12月上旬まで、関東一遅い紅葉が楽しめる「養老渓谷温泉」
関東一遅い紅葉で知られる千葉県の養老渓谷。例年は11月20日頃~12月初めが見頃で、12月中旬くらいまで長く楽しめます。ローカル線・小湊鉄道の養老渓谷駅が最寄駅で、駅からすぐにハイキングコースが始まります。
温泉はヨード分を多く含む黒湯の塩化物泉や、炭酸水素ナトリウムの冷鉱泉と宿により異なり、紅葉散策で疲れた体を癒してくれます。
養老渓谷温泉|関東最後の紅葉が楽しめる温泉【魅惑の温泉案内 第55回】
■5:豪雪で利用できなくなる前に楽しみたい「燕温泉」
新潟県と長野県に広がる上信越高原国立公園。その妙高登山の東側の入り口に位置するのが新潟県妙高市の燕温泉です。古くから湯治場として利用されてきましたが、冬は豪雪で温泉が利用できなくなるほどの秘湯です。
2か所ある野天風呂のひとつ「黄金の湯」は、秋になると岩風呂の周りに見事な紅葉が広がり、まさに黄金の湯を体験できます。野天風呂の営業は6月上旬~11月上旬で、日没以降は利用できませんので、ご注意ください。
燕温泉|乳白色の温泉が湧く越後の秘湯は「トリプル美人の湯」【魅惑の温泉案内 第87回】
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疲れを癒やし、リラックスさせてくれる温泉。紅葉スポットとともに楽しむ温泉もおつなものです。ぜひ出かけてみてください。
文/編集部