「いざいざ奈良」で注目される「奈良町」散策の魅力

鈴木亮平さんの出演でおなじみのJR東海「いざいざ奈良」キャンペーン第6弾は、世界遺産の「興福寺」をはじめ、文化や歴史を味わえる町並みの「奈良町」エリア。

京都駅から交通の便のよい近鉄奈良駅の周辺ゆえに古都の街歩きの楽しみを味わうには最適だ。

8世紀、日本の首都として栄えた古都・奈良。歴史的な寺院が点在、落ち着いた趣のある街には、自由に歩く鹿もいる。豊かな歴史と自然の美しさを存分に味わいたい。

世界遺産「興福寺」を拝観。1300年の時の流れを偲ぶ

和銅3年(710)の平城京遷都に伴い、藤原不比等により飛鳥から移された興福寺。藤原氏の氏寺として栄えた法相宗の大本山である。奈良で最も高い五重塔(高さ約50.1m)や北円堂、南円堂、三重塔といった国宝や重要文化財の建築物とともに、天平時代の阿修羅像ほか、国宝に指定された仏像が日本一多い興福寺。何度訪れても見どころは尽きない。

もっとも国宝五重塔は現在、明治時代の修理以来120年ぶりという大規模修理工事の真っただ中で、素屋根に覆われている。修理が完了するのは令和13年2月頃の予定とされ、残念に思う向きもあるだろうが、それはそれ。「今しか見られない風景」として、歴史の一場面に立ち会っているのだと受け止めたい。

歴史をひもとけば、興福寺は繰り返し火災の被害にあってきた。

そのひとつ、伽藍の中心である中金堂は、藤原不比等により奈良時代に創建されたと伝えられ、江戸時代中期までに6回の焼失と再建を繰り返してきたが享保2年(1717)の焼失後は、再建には至らなかった。

当時の江戸幕府は財政難、興福寺も経済的な苦境の時期にあったためだった。約100年後の文政2年(1819)、町家の人々の寄進により、規模を縮小して「仮堂」が建てられたが、再建されることなく時が流れていった。

平成30年(2018)、中金堂は創建当初の姿や規模で復元、再建落慶された。桁行9間(正面37.0m)、梁行6間(側面23.0m)の堂々たる建物は、奈良時代以降の文献に残る記録や、敷石の発掘調査などの結果を反映したもの。創建当時と同じ朱や青丹などあざやかに彩られている。

1300年の昔、奈良はシルクロードの終着点として、渡来人が行き交う国際都市であった。極彩色の建物からは、そんな古代都市の様子が浮かび上がってくる。

堂々たる姿で再建された中金堂。シルクロードの終着点だった時代に思いを馳せたい。

11月には中金堂の夜間特別拝観が実施され、暗闇に浮かびあがる幻想的な雰囲気を堪能できる。

※実施の詳細は、興福寺HP(https://www.kohfukuji.com/)にて。

興福寺で最古の建物・三重塔

先述のとおり、五重塔の姿は見えないが、興福寺には伽藍の西側に優美な三重塔(国宝)がある。北円堂と並んで興福寺の境内に残るもっとも古い建造物だ。

康治2年(1143)に完成するも、平重衡の南都焼打によって治承4年(1180)焼失、鎌倉時代前期に再建されたものだが、木割り(部材の寸法や組み合わせのバランス)が細く、軽やかで優美な線は、平安時代の建築様式を伝えているとされ、見どころとなっている。

南円堂の西側に秘めやかに建つ三重塔。北円堂と共に興福寺で最古の建物である。

この三重塔には大きな特徴がある。通例、塔は、相輪(塔の屋根から天へ伸びる金属製の部分の総称)から、基壇まで心柱が貫いているものだが、この三重塔の心柱は相輪から二重まで。初重は四天柱(周囲の4本の柱)間に対角線に板を張り、板の両面に千体仏が描かれている。この構造は興福寺の三重塔に独特のもので、他に例はないそうだ。

さらに明治時代の神仏分離令以降は、初重東側の須弥壇に、かつて子院だった世尊院の弁才天坐像と十五童子が安置されている。

1年に1度、7月7日の弁才天供で、特別開扉され法要が行なわれているが、EXサービス会員向け限定で、11月23日(土・祝)、24日(日)に特別御開扉が実施される。美しい三重塔の切り絵御朱印を授かることができる。

国宝館の仏像は見逃せない

また興福寺は、国宝に指定された仏像彫刻の所蔵件数が日本一の寺院である。見ごたえのある国宝館へ立ち寄らないわけにはいかない。

千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ)立像を中心に、奈良時代の阿修羅(あしゅら)像などの乾漆八部衆(はちぶしゅう)立像や乾漆十大弟子(じゅうだいでし)立像、平安時代の板彫十二神将(いたぼりじゅうにしんしょう)立像、鎌倉時代の木造金剛力士(こんごうりきし)立像、木造天燈鬼(てんとうき)・龍燈鬼(りゅうとうき)立像ほか、多数安置されている。

手を合わせたのち、心ゆくまで向き合いたい。

木造千手観音菩薩立像。合掌している一対の他に40本の手があり、あらゆる方法で人々を救う観音菩薩の慈悲を象徴している。
阿修羅像。正面の憂いを帯びた表情は、戦いの神である阿修羅が仏教に帰依し、それまでの悔恨を表しているといわれる。

※記事中の写真は、特別な許可を得て撮影しています。
※詳細は「いざいざ奈良キャンペーン興福寺編」特設サイトhttps://nara.jr-central.co.jp/campaign/izaiza_kohfukuji/をご覧ください。

「奈良町」散策の勘どころ。体験したい食と酒

奈良では「スパイスカレー」を食すべし

シルクロードの終着点である奈良は、スパイスと縁が深い。奈良時代、医薬として日本に渡来、今も正倉院には約40種が現存するという香辛料、現在はカレーのスパイスとしてなじみ深い物が多い。クローブは丁字(ちょうじ)、クミンは馬芹(ばきん)など漢名がついていて、現在も生薬として漢方薬に使われている。

奈良時代、少なからぬ渡来僧が暮らした寺院は、あるいはスパイスの香りがただようことがあったのかも知れない。

そんな歴史や風土の記憶だろうか、近年、奈良ではスパイスの風味を打ち出したカレー店が次々と登場している。

そのひとつ「cafe & gallery メカブ」は、2023年11月のオープンながら、「スパイスカレーランチ」が評判の店だ。

この店では、11月限定で興福寺執事長で境内管理室長の辻明俊さん監修による「たぬきカレー」が味わえる。興福寺に残る中世の記録『多門院日記』に記された「たぬき汁」がヒントになっているそうだ。

具材にはこんにゃく、大根、ごぼうを使用、香辛料には原型を残した丁字、八角(スターアニス)黒胡椒が香りと食感のアクセントを発揮し、鬱金(ターメリック)やコリアンダー、ガラムマサラなど粉末のスパイスが、清々しく風味をまとめる。

ひき肉のような食感は、高野豆腐やレンズ豆、ひよこ豆だそうだ。隠し味には地元酒蔵の酒粕を使用しているとのこと。

11月限定の「たぬきカレー」。興福寺に残る『多聞院日記』がヒントになっているというカレーをぜひ賞味していただきたい。ランチセットで1300円(税込)。

奈良の歴史や名刹と香辛料とは思いも寄らぬ組み合わせだが、舌と胃袋で体感し、まほろばの都に思いを馳せるのも旅の楽しみだ。

実はこの「cafe & gallery メカブ」、本誌2024年8月号のカレー特集で、興福寺執事長で境内管理室長の辻明俊さんと大安寺副住職の河野裕韶さんによる「カレー対談」をさせてもらっている。

「香辛料や薬草が手を取り合って、ひとつのカレーになった。食材に調和をもたらすスパイスは仏教に通じます」とはそのときの辻さんの言葉である。

cafe & gallery メカブ
https://www.cafe-mekabu.com

「清酒」発祥の地・奈良の酒蔵で5種を利き酒

米を醸して造る日本酒は元来、どぶろくなどの「にごりざけ」だった。これが透明な「清酒」になったのは中世の奈良、正暦寺でのこと。それゆえ奈良は「清酒発祥の地」とされている。

清酒「春鹿」の醸造元として知られる今西清兵衛商店は、興福寺にほど近い「奈良町」の一角で明治17年創業。街を歩きながら立ち寄れる酒蔵だ。

ここでは5種類の「春鹿」を、700円(税込)で利き酒できる。5種類のラインナップは季節により変わるそうだが、飲み比べると味わいの違いがよくわかる。説明を聞きながら味わえば、同じ蔵でも米や製法次第でここまで違うかと一段と興味も増す。

「春鹿 純米吟醸 超辛口 生原酒」「春鹿 青乃鬼斬 生もと純米原酒」ほか限定品を交えて5種類。手前のグラスは底に鹿が彫られた蔵のオリジナル。店内で購入可能。1個440円(税込)
気に入った一本(といわず何本でも)を土産に購入したくなる。

現代につながる和室のしつらえや美意識の源流に触れる

今西清兵衛商店に隣接する「今西家書院」にもぜひ立ち寄りたい。ここは室町時代における初期の書院造りの特徴をよく伝える建物で重要文化財に指定されている。

もともとは興福寺大乗院家の坊官を永く務めた福智院家の居宅を、大正13年に今西家が譲り受けたものという。

角柱、障子、襖など和室のしつらえは書院造りに由来する。「猫間(子持ち)障子」「網代編みの天井」など、和の美意識は細部まで息づいている。

接客や謁見、会議に使われていた書院(上段の間)。本来は板敷の一間だが、江戸時代に床の間を造り、畳を敷いて二間とした。鴨居・敷居を取り外すと、元の板の間に戻る。

庭を眺めながら喫茶もできる。「いざいざ奈良」キャンペーンCMにも登場する「春鹿」の大吟醸酒粕アイス最中や季節の和菓子などのデザートプレート(下写真)も賞味できる。

「デザートプレートと奈良の和紅茶」1200円(税込)。アイス最中は「春鹿」大吟醸の酒粕とジャージー牛の濃厚なミルクを使い、今西清兵衛商店と地元奈良の牧場による共同開発。

※詳細は「いざいざ奈良キャンペーン興福寺編」特設サイトhttps://nara.jr-central.co.jp/campaign/izaiza_kohfukuji/をご覧ください。

酒蔵をリノベーションした個性的で上質なホテル

町の記憶、土地の歴史まで体感できる宿

「奈良町」の東に位置する春日山は、春日大社の神域として、1100年以上も前から森林が守られてきた、樹齢数百年の巨樹が息づいている。その伏流水が湧き出る「奈良町」周辺には、酒造がいくつもあったという。

「豊祝」で知られる奈良豊澤酒造もまた、明治時代にこの地で創業している。昭和10年に酒蔵が移転した後、住居として使われていた場所で建物をリノベーションし、個性的で上質な宿として生まれ変わったのが「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」である。

床の間や欄間のある和室とベッドルームを備える部屋や、元米蔵という太い梁が魅力的な部屋、茶室だった隠れ家のような部屋など、すべて異なる造りの全8室。いずれもテレビと時計はおかれていない。歴史ある建物に流れる時間を、存分に体感したい。

「いざいざ奈良」のCM・公式サイトにも登場する客室。かつての米蔵をリノベーションしている。

各客室の冷蔵庫には豊澤酒造の酒が用意され、いずれも無料。さらに入浴用の酒粕も用意されている。酒粕の馥郁たる香りが漂う浴室は、日本酒好きには桃源郷の心持ちとなることだろう。

蔵元直送の美酒と滋味あふれる地元食材の料理

「NIPPONIA HOTEL 奈良 ならまち」のレストランは、酒蔵の土間をリノベーションした空間だ。高い天井に黒光りする梁が、伝統の奥深さを感じさせる。奈良豊澤酒造から直送の搾りたての酒など、ここでしか味わえない日本酒と、滋味あふれる奈良の食材を活かした料理の組み合わせが満喫できる。昼食と夕食は宿泊者でなくても楽しめる。

宿泊者だけの“特権”が朝食だ。

まずは奈良の名物「茶粥」を薬味とともに。大和野菜など、滋味あふれる地元奈良の食材を使用した粕汁は、優しく体に染みわたるよう。たっぷり呑んだ翌朝に、これ以上はない和の朝食だ。

優しい味わいの朝食。茶粥とともに供される粕汁、鮮魚の柚鮭焼き、卵焼き、柚子大根、おぼろ豆腐、小鉢3種、雑穀ごはん。

市街地に豊かな自然が隣接する奈良。その精髄が「奈良町」と言えよう。錦繍の秋、寺院の限定公開などさまざまな特典のある「いざいざ奈良」キャンペーンで訪れてみてはいかがだろう。

※詳細は「いざいざ奈良キャンペーン興福寺編」特設サイトhttps://nara.jr-central.co.jp/campaign/izaiza_kohfukuji/をご覧ください。

取材・文・撮影/編集部

 

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