スペインの旅と聞いてイメージするのは、紹介される機会の多いバルセロナやマドリッドかもしれない。が、クローズアップされる機会こそ少ないものの、旅慣れた人を魅了する地域がある。それが、スペイン建国の礎として歴史に名を残すアラゴン王国の栄えたアラゴン州だ。
果たして、アラゴンとはどのような地域なのか? そして、その魅力とは? 今回はワールド航空サービスの南欧担当・萩原さんに、旅行マニアを引きつけてやまないスペイン・アラゴン州の魅力的な街についてお聞きした。
■1:ハカ
ピレネー山脈の麓に位置するハカは、1035年にラミロ一世がアラゴン王国を建国した由緒ある古都。1118年にアルフォンソ一世がイスラム勢力からサラゴサを奪還、遷都するまで、都が置かれていた地である。
最大の見どころは、町のシンボルである城塞。美しい星型をしており、函館の五稜郭の原型になったといわれている。またサンティアゴ巡礼の道沿いであるため、古き良き宿場町の雰囲気を残している点にも注目したい。
ところでサンティアゴ巡礼といえば、巡礼のシンボルであるホタテ貝の貝殻が有名。そのため、貝殻をイメージしたチョコレートも数多く販売されている。
「アラゴン名物の仔羊のチリンドロンソースは一度お試しいただきたい料理です。玉ねぎやトマトを煮込んだソースで食べるラムは、ラムが苦手な方にもおすすめです。」(ワールド航空サービス萩原さん)
■2:アルバラシン
「スペインで最も美しい町」のひとつと称えられている城塞都市が、アルバラシン。素朴なキリスト教文化が残るアラゴン北部とはうって変わり、迫力に満ちたスペイン・アラブの世界が魅力だ。
山の斜面に連なる城壁は、14世紀に築かれたもの。現在も最良の状態で保存されており、赤茶けた家並みと見事に調和している。目の前に広がるその光景は、まるで絵画のような美しさだ。
路地が迷路のように続くノスタルジックな町並みから感じられるのは、イスラム文化からの強い影響。スペイン北部にはイスラム的な影響の強い建築物はあまり多くないだけに、アルバラシンは稀有なエリアだといえる。
「お勧めの写真スポットは、20分ほど村から登った城壁です。ここから見下ろす村は三日月のような美しい曲線を描いて周囲の自然と調和し、まさに中世の村そのものです。」(ワールド航空サービス萩原さん)
■3:テルエル
テルエルは、世界遺産「アラゴンのムデハル建築群」中の4つを擁する町。「サンタ・マリア大聖堂の塔、屋根、ドーム」「サン・ペドロ教会と塔」「サン・マルティン教会と塔」「エル・サルバドール教会の塔」がそれだ。イスラムとカトリックが融合したムデハル建築の奥深さを実感できるのである。
またテルエルは、グルメの町でもある。特に有名なのは生ハム。というのも、スペイン国内でも有名な生ハムの産地なのだ。もちろん価格もリーズナブルなので、本場ならではの味わいを手軽に楽しむことができる。濃厚なスペインのワインとともに味わえば、極上の時間を過ごすことができるだろう。
加えて、世界3大珍味であるトリュフの産地でもある。日本では考えられないほどリーズナブルな価格で、贅沢な風味を堪能できるのだ。
「この町は、
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以上、日本ではあまり知られていない、スペイン・アラゴン州の魅力的な街を3つご紹介した。
飾り気のない素朴さ、ピレネー山脈の雄大さ、そして中世からの時代を感じさせるムデハル建築と、アラゴンはまるでスペインの魅力を凝縮したかのよう。多くの旅を経験してきた人はもちろんのこと、初めてスペインを訪れる人にも、素晴らしい思い出を残してくれることだろう。
文/印南敦史
写真提供/ワールド航空サービス