江戸幕府創設からおよそ420年。江戸は、武士、町人、職人、農民といった人々の力によって都市として発展し、京都、大坂に続き三都のひとつとなりました。大都市となった江戸の人々と動物とのかかわりをテーマにした「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展が2022年、フランスのパリ日本文化会館で開催され、大好評を博しました。
東京ステーションギャラリーの「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」は、パリの展覧会を拡充した凱旋帰国展です。(4月27日~6月23日)
本展の見どころを、東京ステーションギャラリー学芸室長の田中晴子さんにうかがいました。
「江戸から東京へ、人々と動物たちとの日常的な関わり方や、その関係性の特質とはどんなものだったのか。東京都江戸東京博物館の学芸員が企画・構成した展覧会が、日本国内4会場を巡回します。
自然のなかに都市が生まれ、文化が栄え、動物たちとのさまざまな関係性が生まれました。「どうぶつ百景」という展覧会名は、人々と動物の関係性と出品内容の豊富さを示しています。本展では、東京都江戸東京博物館の61万点もの収蔵品のなかから、画巻、浮世絵、衣類、装飾品、玩具などを選りすぐり、展示替えをしながら約240件を紹介します。
本展には歌川広重(初代)の「名所江戸百景」シリーズのうち6点を展示します。《浅草田圃酉の町詣》では、白猫が部屋から外を眺めています。当時の浅草には田圃が広がり、富士山がよく見えました。《高輪うしまち》では、車輪の奥に小さな犬たちが見えます。番犬としての役割も果たす仲間のような存在であり、町として犬を飼っていたといいます。風景画で有名な広重ですが、この機会に動物たちにも注目して欲しいです。
同館で人気の高いのが、富裕層の女性向けに作られた藤に猿を描く懐中煙草入れ。猿の仕草が親しみやすく、藤には季節感や華やかさがあります。江戸期には、町人層が文化の担い手ともなり、バリエーションに富んだデザインが生まれ、動物たちは身近なモチーフでした。
なお、東京会場だけの特別展示「東京の鉄道馬車」もお見逃しなく」
外国人が見た江戸の人々とどうぶつ、見世物から動物園へ、など興味深い切り口の展示もあります。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより
会期:前期2024年4月27日(土)~5月26日(日)、後期5月28日(火)~6月23日(日)
※前・後期で作品の展示替えあり
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅丸の内北口改札前
電話:03・3212・2485
公式サイト:https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
開館時間:10時~18時、金曜日は~20時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし4月29日、5月6日、6月17日は開館)、5月7日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
巡回予定:山梨県立博物館(7月13日~9月2日)、愛知県美術館(2025年4月~6月)、
富山県水墨美術館(2025年7月~9月)
取材・文/池田充枝