サライ世代にとっての人気渡航先といえばヨーロッパだが、日本からのフライトは長時間におよぶだけに、どうせ行くならより快適で魅力的な目的地を選びたいものである。
ではこの冬、ヨーロッパに旅するなら、どんなところを目指せばよいだろうか。
「寒い日本を後にして贅沢なヨーロッパ旅行をするなら、暖かなところでのんびりしていただきたい。そう考えると、おすすめの行き先はシチリア島のすぐ下、南地中海の島国であるマルタ島です。聖ヨハネ騎士団が築いた要塞都市ヴァレッタから、のどかな風情が漂う漁村の市の賑わいまで、マルタの魅力はとても多彩です」
そう説明してくださったのは、ワールド航空サービスのヨーロッパ担当、志釜亜矢さん。
巨石文明の象徴ともいえるマルタ島のハジャール・イム神殿、ゴゾ島のジュガンティーヤ神殿などは、ヨーロッパ文明の歴史を感じさせる。ヴァレッタでのハーバークルーズでは、城塞都市の威容を海から一望できる。
またヴァレッタのシンボルであるヨハネ大聖堂の美術館では、イタリアバロック絵画の巨匠カラヴァッジョに『聖ヨハネの斬首』などの名作を鑑賞できる。ちょっと贅沢で、なかなか体験できない旅となるに違いない。
志釜さんおすすめの宿泊先は、首都ヴァレッタから少し離れたサン・ジュリアンにある『ル・メリディアン・サンジュリアン・ホテル&スパ』。プライベート・ビーチを併設した5ツ星のリゾートホテルで、広々とした部屋から紺碧の地中海を一望する開放感は格別とのこと。同社のツアーでは、ホテルに5連泊しながら、首都ヴァレッタや各地へ足を延ばすことになるのだという。
一方、同社の竹下優さんさんは別の場所をすすめる。
「ヨーロッパには歴史ある街がたくさんありますが、私はその規模、美しさ、ロマンにおいてサンクトペテルブルクに匹敵する街はわずかしかないと考えています。由緒ある宮殿や貴族の館が美術館や博物館として公開されており、帝政ロシア時代の雰囲気に気軽に触れることができる。そんな側面も、この街の大きな魅力です」
ロシアが誇る芸術の都、サンクトペテルブルク。1703年にピョートル大帝がネヴァ川の河口に築き上げたこの人工都市は、ロマノフ朝の絶頂期とともに華麗に花開き、いまなおその栄華の香りを街のいたるところに漂わせている。
この街の魅力としての代表格といえば、かつての皇帝の冬の住まい「冬宮」に設けられたエルミタージュ美術館である。当然のことながら、同社のツアーでは本館はもちろんのこと、印象派の名画を収蔵するエルミタージュ新館も見ることができるが、それだけではない。夏の混雑するシーズンにはなかなか見ることのできない、知られざる個性豊かな美術館・博物館巡りもできるというのだ。
たとえば2013年にフォンタンカ運河に面した貴族の館を改修してオープンした「ファベルジェ博物館」。ファベルジェは19世紀後半に活躍したロシア皇室御用達の宝石商・金細工師で、有名な「ファベルジェの卵」とは、皇帝の依頼により毎年作られた「インペリアル・イースターエッグ」のこと。世界中に散逸したため、もはや57点しか現存していないそうだが、ロシアの富豪がそのうち数点を買い戻し、約4000点の装飾工芸品とともに開いた私設博物館である。
竹下さんおすすめの宿は、サンクトペテルブルクの名門ホテル「グランド・ホテル・ヨーロッパ」。ここに連泊し、サンクトペテルブルクの美と芸術を味わいつくすプランを提供しているという。
さて、マルタ島にするか、あるいはサンクトペテルブルクにするか。贅沢な悩みだが、いずれも甲乙付けがたい魅力的なスポットであることは間違いないだろう。次のヨーロッパ旅行の参考にしていただきたい。
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文/印南敦史
写真提供/ワールド航空サービス