3月16日、北陸新幹線は石川県の金沢から福井県の敦賀まで延伸開業する。これで東京からは、より北陸地方が近くなる。この機会に、春の北陸へぜひ足を運んでほしい。

遺構や出土品を風景と合わせ朝倉氏の城下町を今に伝える

1階奥の遺構展示室。出土した遺構を間近に見学できる。石敷きの施設は、川湊の船着場や荷揚げ場、道路などと考えられている。

現在の福井市の中心部から東へ約13km、足羽川(あすわがわ)に支流が流れ込む。15世紀後半、この支流沿いの南北約3kmの一乗谷に、戦国武将の朝倉孝景が本拠を移して山間に築城した。以来、100年を超えて朝倉氏は5代にわたり一乗谷を居城とし、越前国を統治した。そして、一乗谷には城下町が築かれていった。

ところが天正元年(1573)、織田信長が3万の軍を率いて進撃。朝倉軍も応戦したが、敦賀で大敗。一乗谷に火が放たれ、3日3晩燃え続け灰燼に帰してしまった。

復元遺跡に隣接した博物館

2階展示室の巨大ジオラマは、城下町の一部を約30分の1で再現。町屋、武家屋敷、寺院を合わせて100棟あまりの建物がある。

一乗谷の発掘調査が始まって50年を超える。令和4年10月、調査成果を一気に見せるべく開館したのが、一乗谷朝倉氏遺跡博物館だ。学芸員の大竹桃子さんはいう。

「城下町が焼失してからは、開発もそれほど行なわれませんでした。そのため、戦国時代の城下町一帯をまとめて出土させることができました。とても珍しいことです。当博物館は歴史学や考古学の専門家だけではなく、造園学などの学芸員もいて、遺跡全体の景観保存も考えながら活動しています」

館内には大きな窓が随所に設けられ、風景が自然に目に入る。近隣には朝倉氏時代の町並みが復元されている。風景と展示で450年前の城下町を体感する仕掛けだ。博物館は2階建ての低層建築で、圧巻は1階奥の遺構展示。石敷きの施設が出土した状態で観覧できる。2階には夥しい数の出土品が並ぶ。

出土品の食膳具。漆器は黒色の器面に赤色漆で装飾されている。陶磁器は中国製の磁器を主体に瀬戸焼や美濃焼も出土している。
銭を紐で束ねた「さし銭」。1さし100文で現在の価値で1万円から1万5000円程度。当時の銭の大部分は中国からもたらされた。

火山の噴火により一夜で灰に埋もれたという、イタリアのポンペイ遺跡を思わせる。短時間で滅んでしまった古代都市や城下町の遺構や出土品は、瞬間凍結されたかのようで、当時の生活の様子までうかがえる。

遺跡の一部は、遺構をもとに町並みまで復元されている(博物館とは別料金で330円)。ここは町人の長屋の中庭。写真/インディ藤田

一乗谷朝倉氏遺跡博物館

2階にある当主の館の一部を原寸再現した展示。

福井市安波賀中島町8-10
電話:0776・41・7700
開館時間:9時〜17時
休館日:月曜(祝日の場合は翌火曜)
入館料:700円
交通:JR福井駅から越美北線で一乗谷駅まで約15分、下車後徒歩で約3分

北陸新幹線が敦賀まで開業

福井県へ延伸される北陸新幹線。東京から福井までは約2時間51分、東京から敦賀までは最短約3時間8分で結ぶ。

3月16日、これまで東京から石川県の金沢までを結んでいた北陸新幹線が、福井県の敦賀まで延伸し、新たに6つの駅が開業する。これで石川県、富山県、福井県の北陸3県をより便利に旅することができる。

東京から敦賀まで直通する「かがやき」と「はくたか」は、1日に14往復の運行を予定している。敦賀から富山間は「つるぎ」も運行される。

取材・文/藍野裕之 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。

『サライ』2024年4月号の特集第2部は『芸術建築として「国宝の城」を愛でる』。

 

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