3月16日、北陸新幹線は石川県の金沢から福井県の敦賀まで延伸開業。これで東京からは、より北陸地方が近くなる。この機会に、春の北陸へぜひ足を運んでほしい。
山桜が咲く森に囲まれた越前松平家の菩提所
大安禅寺の大伽藍は、福井市の西の山間に厳かに立つ。周囲は豊かな森で、新緑が萌える少し前、山桜の薄紅色の花がところどころに咲く。臨済宗の禅寺で、越前松平家の菩提所だ。4代藩主の松平光通が建立した。万治元年(1658)のことである。
「その頃、福井藩では飢饉や疫病が流行して民衆たちは苦しみ、また政治改革が功を奏さず財政難を招いていました。光通公は思案を続けるなか、思い立って当時名僧として名を馳せていた大愚宗築禅師に相談したのです。すると禅師は“先祖の恩、両親への恩を忘れないように”とおっしゃったと伝えられています」と話すのは、副住職の高橋玄峰さん(41歳)だ。
こうして光通は、初代藩主の結城秀康ほか歴代藩主の墓所を山内に造営した。だが宗築禅師の言葉は、松平家のことだけを指したのではなく、誰もがそうあるべきとの意味で発せられた。
そこで光通は、大安禅寺を修行僧だけではなく、広く民衆に頼られる寺としようと考えた。その方針は代々伝えられてきた。高橋さんも境内にさまざまな花を植え、坐禅会や法話会ほか、多くの人々を招き催しを開いている。
古い木造建築の構造を見る
大安禅寺は、第二次世界大戦の空襲や昭和23年の福井地震の被害を免れ、約270年前の創建当時の建物が残っている。
「光通公は第二の城のつもりがあったようですが、災害が多かった福井県では、城のように慕ってくださる方が多い」(高橋さん)
そんな、さまざまな思いが向けられてきた大伽藍は、国の重要文化財に指定された。現在は「令和の大修理」(令和14年頃まで)で、外から眺望することはできない。そこで高橋さんは、改修の様子を見てもらおうと、見学バルコニーを設置。東北産のヒバを存分に使った江戸初期の木造建築の木組みの壮観は、今しか見られない。
大安禅寺
福井市田ノ谷町21-4
電話:0776・59・1014
拝観時間:9時~17時 無休
拝観料:500円
交通:JR福井駅から京福バスで約30分、大安禅寺前バス停下車後、境内まで徒歩約20分 毎月第2・第4金曜に「金曜坐禅会」を開催(参加費400円)
北陸新幹線が敦賀まで開業
3月16日、これまで東京から石川県の金沢までを結んでいた北陸新幹線が、福井県の敦賀まで延伸し、新たに6つの駅が開業する。これで石川県、富山県、福井県の北陸3県をより便利に旅することができる。
取材・文/藍野裕之 撮影/藤田修平
※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。