3月16日、北陸新幹線は石川県の金沢から福井県の敦賀まで延伸開業。これで東京からは、より北陸地方が近くなる。この機会に、春の北陸へぜひ足を運んでほしい。

珍しい笏谷石を使った石垣や堀割は往時のまま残る

本丸の西側に架かる屋根付きの橋御廊下橋といい、歴代の藩主はここを渡った。築城400年の記念事業で平成20年に復元された。写真/try do camera

福井城は江戸時代の約270年間、越前松平家の居城となった城である。関ヶ原の戦い後、徳川家康は福井に次男の結城秀康を向かわせた。すでに柴田勝家が築いた城はあった。それを秀康は拡張し、複雑な堀割を築いていった。

現在、往時の建物はない。だが、本丸の石垣、堀割の一部などが残っている。そして、点々と復元された建造物があり、城址各所の桜が満開となれば圧巻だ。

城址一帯は、一般道が通じていて自由に散策できる。今年39回となる「ふくい桜まつり」(※3月23日〜4月7日。市内の桜の名所が一斉に飾り付けされ、各種イベントが開催される。)の会場になり、期間中はライトアップされる場所もある。

城址散策の前に博物館で予習

郷土歴史博物館の付属施設に養浩館庭園がある。もとは松平家の別邸。江戸時代の建物は福井空襲で焼失。平成5年に復元された。

本丸跡の北側に位置する福井市立郷土歴史博物館では、福井市の古代から近現代までの歴史を展示。とりわけ福井城が威容を誇った江戸時代の展示が充実している。学芸員の中西健太さん(31歳)はいう。

「福井城は山々に囲まれているわけではありませんでした。地形的に弱点が多く、それを補強するため複雑な堀割を築く必要がありました。堀割や各所の石垣に使われているのは、福井市内の足羽山(あすわやま)でしか採れない笏谷石(しゃくだにいし)という珍しい石材。青緑色で、濡れると深みが出るとても美しい石です」

事前に博物館で予習をすれば、城址散策が深みを増すだろう。

往時の再現模型。福井城の屋根は、城では珍しい赤瓦だった。越前赤瓦といわれ、鉄分を含む釉薬を掛けて焼かれた手の込んだ瓦である。
櫓の屋根にあった鯱瓦の現物が復元して展示されている。施釉された瓦は光り、往時の福井城の美しさが偲ばれる。

福井市立郷土歴史博物館

福井市宝永3-12-1
電話:0776・21・0489
開館時間:9時〜19時
休館日:不定(3月13日〜15日は休館)
入館料:博物館の平常展示の観覧は220円、平常展示と養浩館庭園の観覧は350円(特別展は別に追加料金)
交通:JR福井駅から徒歩で約15分

北陸新幹線が敦賀まで開業

福井県へ延伸される北陸新幹線。東京から福井までは約2時間51分、東京から敦賀までは最短約3時間8分で結ぶ。

3月16日、これまで東京から石川県の金沢までを結んでいた北陸新幹線が、福井県の敦賀まで延伸し、新たに6つの駅が開業する。これで石川県、富山県、福井県の北陸3県をより便利に旅することができる。

東京から敦賀まで直通する「かがやき」と「はくたか」は、1日に14往復の運行を予定している。敦賀から富山間は「つるぎ」も運行される。

取材・文/藍野裕之 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。

『サライ』2024年4月号の特集第2部は『芸術建築として「国宝の城」を愛でる』。

 

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