行程
四条大宮駅(発)→西大路三条駅(途中下車)→太秦広隆寺駅(途中下車)→車折神社駅(途中下車) 車折神社内芸能神社参拝→嵐山駅(着)(発) 『有職菓子御調進所 老松嵐山店』→帷子ノ辻駅(嵐電北野線に乗り換え/発)→妙心寺駅(途中下車) 『御室和菓子 いと達』→北野白梅町駅(着)
旅した人 福澤 朗さん(フリーアナウンサー・59歳)
昭和63年、早稲田大学を卒業後、日本テレビ入社。アナウンサーとして、数々のヒット番組に出演。平成17年、同局チーフ・アナウンサーを経てフリーアナウンサーに転身。鉄道は「呑み鉄」派を自認する。
京都の市街地の北西部を走る、京福電鉄の嵐山本線と北野線は「嵐電(らんでん)」と呼ばれ、身近な交通機関として沿線の住民に親しまれている。嵐山本線(四条大宮駅~嵐山駅)は7.2km、北野線は(帷子ノ辻駅~ 北野白梅町駅)は3.8kmの短い路線だが、嵐山・嵯峨野の景勝地や鹿王院、仁和寺、龍安寺といった名刹に嵐電の最寄り駅があり、京都観光にも使い勝手のよい鉄道である。
そんな嵐電をフリーアナウンサーの福澤朗さんとともに、途中下車しながら巡った。嵐電に乗るのは高校の修学旅行以来だという福澤さんだが、当時の記憶は蘇るだろうか。四条大宮駅から嵐山駅行きに乗車した。
「四条大宮を出て西大路三条からしばらく併用軌道(路面電車)になります。この感覚は私が好きな江ノ電(※江ノ島電鉄。神奈川県の藤沢駅~鎌倉駅の約10kmを結ぶ。嵐電と姉妹提携を結んでいる。)とそっくり。地元の人の足でありながら多くの観光客が利用するという“二刀流”のところも江ノ電と似ています。何十年ぶりに乗ったという感じがまったくしません」(福澤さん)
西大路三条駅で途中下車。ここから太秦広隆寺駅まで三条通を併用軌道が断続的に約1.6km続く。上りホームは道路上にあり、路面電車の「電停」の風情だ。ホームに立ち福澤さんは感慨深げだ。
「路面区間は物理的にも人間と電車の距離が近く、この鉄道が生活に密着していることを改めて感じます。1978年に廃止された京都市電を思い出します」
太秦広隆寺駅では、広隆寺の楼門を背景に路面電車と記念撮影。
「ここは嵐電の定番撮影スポットです。人はなぜか定番スポットで写真を撮ることに貪欲です。何が何でもそこに行き、写真を撮ってやろうという気になります(笑)」
芸能神社にお詣りをする
車折(くるまざき)神社で下車。境内に芸能神社が祀られており、以前から訪れたかったという。神社には有名な芸能人の名が記された朱色の玉垣がずらりと並ぶ。
「こういう仕事をしていますので、お詣りさせてもらいました。しかし、日本人は神社の朱色を見るとなんで気分が高揚するのでしょう」
車折神社
京都市右京区嵯峨朝日町23
電話:075・861・0039
開門時間:9時30分~17時 境内自由
交通:嵐電車折神社駅すぐ
終着の嵐山駅構内では京友禅をモチーフにしたモニュメント「キモノフォレスト」で記念撮影だ。
「ここも定番の“映えスポット”。外せません(笑)」
老舗和菓子店の茶房で一服、次は北野線で北野白梅町に向かう。
立ち寄り処
有職菓子御調進所 老松嵐山店
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町20
電話:075・881・9033
営業時間:9時~17時
定休日:不定
嵐電嵐山駅より徒歩約3分、トロッコ嵯峨駅より徒歩約6分
話題の最中をお土産に購入
嵐山駅から四条大宮駅行きに乗車、帷子ノ辻駅で北野線に乗り換えた。北野線では妙心寺 駅で途中下車し『御室和菓子 いと達』に立ち寄った。福澤さんの目当ては「くま最中」(上写真)、お土産はこれと決めていた。
店名につく「御室」というのは、店にほど近い仁和寺の異称であり、一帯の地名にもなっている。昨年の秋、仁和寺で将棋の竜王戦の対局が行なわれた際、藤井聡太竜王が頼んだおやつが「くま最中」であった。一躍「くま最中」は世に知られ、開店3年目の住宅街の小さな和菓子店は、全国に知られることになった。
「若いご夫婦で切り盛りされている、和菓子屋さんです。美味しく食べてもらうために、注文を受けてから餡子を詰めるこだわりの店です。きっとそんな思いが、藤井聡太さんにも伝わったのではないでしょうか」(福澤さん)
土産処
御室和菓子 いと達
京都市右京区龍安寺塔ノ下町5-17
電話:075・203・6243
営業時間:10時~17時
定休日:水曜、日曜
交通:嵐電北野線妙心寺駅より徒歩約5分
人の生活を感じる鉄道
「嵐電の魅力ってなんだろうと思うと、一流の観光地でありながら、人の生活を感じるところだと思います。生活路線なんですね。この店も静かな住宅街にあり、僕たちはそこにお邪魔をさせてもらっているわけです。嵐電に乗ると京都がさらに身近に感じます」
衣装協力/モンベル
※この記事は『サライ』本誌2023年10月号より転載しました。