文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)

『ホテル・カリフォルニア』 (1978, 原題Hotel California)のレコードジャケット
“The Eagles – Hotel California”
by Piano Piano! is marked with CC BY 2.0.

米国ではLPレコード(英語ではvinyl record)の人気が復活している。専門の中古レコード屋は勿論のこと、大きな書店や量販店にLPレコードのコーナーが次々と出来、もはや静かなブームとも呼べなくなっているように思える。

『全米レコード協会』の年次報告書(https://www.riaa.com/wp-content/uploads/2022/03/2021-Year-End-Music-Industry-Revenue-Report.pdf )によると、2021年度の音楽再生収益の81%はストリーミングではあるが、その一方でLPレコードの売上は15年連続で増加傾向にあり、1986年以来初めて10億ドル(約1300億円)を越えた。物理的媒体のシェア率はLPレコードが63%で、今ではCDよりはるかに大きい。

 LPレコードのジャケットに使われた場所を探す楽しみ

“10th Brussels Vinyl Record Fair”
by Marc Wathieu is marked with CC BY 2.0.

筆者は熱心な音楽ファンではない。LPレコードの音質がCDやデジタルとどれほど異なるのかは、正直なところよく分からない。むしろ再生や保管の手間を考えると、LPレコードは大変に不便な音楽再生装置だと思っている。

それでも、LPレコードが並べられた棚を一枚一枚めくっていくことはけっして嫌いではない。言うまでもないことだが、LPレコードは物理的に大きい。だからこそ、レコードジャケットのデザインや芸術性が他の媒体より際立って見えるのではないだろうか。CDケースでは小さすぎるし、ストリーミングでは尚更だ。

その意味合いにおいて、少年の頃から筆者の記憶に最も強く印象に残っているLPレコードのひとつはイーグルスの名盤『ホテル・カリフォルニア』である。象徴的な歌詞と印象的なメロディーに加え、パームツリーの後ろに夕暮れのホテルがぼんやりと浮かび上がるレコードジャケットを覚えている人は多いだろう。筆者にとっては、あのイメージと曲は離れがたく、一体化している。

ホテル・カリフォルニアは実在しているのか、あるいはモデルとなったホテルはあるのか、という議論は昔からあるが、作詞・作曲者のひとりであるドン・ヘンリーは架空のホテルであると『ローリングストーン』誌に語っている(https://www.rollingstone.com/music/music-news/eagles-settle-lawsuit-over-hotel-california-name-204993/ )。しかしながら、少なくとも、あのレコードジャケットの撮影に使われた建物はビバリーヒルズ・ホテルだということもはっきりしている。

ビバリーヒルズ・ホテル入り口

ビバリーヒルズは言わずと知れた超がつくほどの高級住宅地である。ハリウッドに隣接していることもあり、映画スターたちが数多く住んでいることでも有名だ。彼らの邸宅をガイド付きで巡るツアーは昔から根強い人気があり、今でも道端では「スター・マップ」が売られている。

ビバリーヒルズ・ホテルの前もそうしたバスやシャトルがひっきりなしに通る、観光スポットのひとつである。レコードジャケットのように、敷地前の歩道にはひときわ高いパームツリーが立ち並び、その奥にある地中海風で古いスタイルの建物はさほど大きなものではない。それだけに高層ビルにはないゴージャスな、それでいて謎めいた雰囲気を醸し出しているようにも見える。

通りから見るビバリーヒルズ・ホテル

もっとも、ビバリーヒルズ・ホテルは1990年代に数年間にも及ぶ大規模な改修工事が行われ、2012年には創業100周年を記念してロビーなどがリモデルされたそうだ。従って、現存する建物はあのレコードジャケットの撮影に使われたものとまったく同じというわけではない。それでも、オールドファンの想像力をかき立てるには十分なだけの外観を今でも保っている。『ホテル・カリフォルニア』が好きな人にとっては、周囲を歩いて回るだけでも感慨深いだろう。もちろん、宿泊してもよいわけだが、1泊最低でも10万円以上はする、とびきり高いホテルであることは記しておく。

「ビバリーヒルズ・ホテル」(The Beverly Hills Hotel)
住所:9641 Sunset Boulevard, Beverly Hills, CA 92010
電話:+1 310 276 2251
公式ホームページ:https://www.dorchestercollection.com/en/los-angeles/the-beverly-hills-hotel/

文・角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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