文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)
日本に並ぶ麺好きのタイ人。様々な種類の麺料理がある中、長年愛されている物の一つが「クイティオ・ルア(ボートヌードル)」だ。バンコクが東洋のベニスと呼ばれ、運河が街中を網の目のように流れていた頃、小舟でこの麺料理を売り歩いていたことが名前の由来だ。その時代の名残りで持ち運びに便利なように丼がとても小さい。
米粉の麺を使用していて、センミー(細麺)・センレック(中太麺)・センヤイ(太麺)などの中から好みの物を選ぶ。基本のスープは茶色のナムトック味、豚の血を使っていて独特なコクがあって病みつきになる。このナムトックスープも小舟売りをしていた当時の主顧客が精力を付けたい肉体労働者だったことに由来するという。
先述のように丼が小さいことから、いろんな麺やトッピングを楽しむことが出来る。中には数十杯も頼むツワモノも。
このクイティオ・ルアの専門店が並ぶ一角がバンコクにある。場所は中心部から少し離れた戦勝記念塔ロータリーの北東側で、往時の名残りの運河がその前を流れている。
1970年代創業の『パーヤック』は、なんと一杯12バーツ(約42円)。タイの物価は。日本の約3分の1〜4分の1だが、それでも安い。現在、普通のクイティオ(米粉麺)を屋台や安食堂で食べると40~50バーツ(約140~175円)する。その上、10杯頼むとコーラがおまけで付いてくるのだ。いつも人々が行列を作って入店待ちをしているのも分かる。
別な繁盛店は『クイティオ・ルア・プラナコーン』。普通味、トムヤム味、イエンタフォー(紅腐乳)味、汁なしなどがあり一杯16バーツ(約56円)。一緒に頼む一品料理も充実している。この店は商売上手で、本店だけでなく、あちらこちらのショッピングモールにも出店をしている。
それぞれの量が少ないから、店を順番に巡って食べ比べをするのも良いだろう。
クイティオ・ルアの小さい丼のアイディアを日本風ラーメンに応用した店も誕生している。
同じ戦勝記念塔ロータリー周辺のショッピングモールに入る「ラーメナ(RAMENA)」。タイ語会話では語尾に‟ナ”をつけて表現をやわらげることが多く、そこから連想した‟ラーメンですよ”という意味合いの造語店名だ。この店、日本風ラーメンが一杯25バーツ(約85円)。メニューには醤油ラーメン、豚骨ラーメン、カツオラーメン、カレーラーメン、脂そばなど5種類が並ぶ。トッピングで卵、チャーシュー、ナルト、メンマ(各25バーツ)、海苔、野菜(各10バーツ=約35円)を選べる。
オーソドックスそうな醤油ラーメンを注文すると、クイティオ・ルアと同じく2~3口で食べ終わりそうなサイズの丼が登場。実際に食べてみると、スープは甘めだが悪くはない。チャーシューが意外と大きめでこちらも美味しかった。
店のメニューを見直すと他の日本食もいろいろあり、中にはチャーシューのせカレーという、ラーメンの具材を利用した珍品もあった。
考えてみると、このクイティオ・ルアのコンセプト、日本でウケるのではないか? いろんな味を楽しみたいが小食でそれが出来ない女性向けはどうだろうか? 先日、次に日本でブームになりそうなタイ料理を紹介(https://serai.jp/tour/1041507)したが、このクイティオ・ルアも新たなトレンドになるかもしれない。
文・写真/梅本昌男(タイ・バンコク在住ライター)
タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌アゴラなどに執筆。観光からビジネス、エンタテインメントまで幅広く網羅する。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。