「人生100年時代」といわれる高齢化社会で、生活を支える一つとなるのが年金制度です。日本の公的年金制度は、20歳以上のすべての人が共通して加入する国民年金と、会社員が加入する厚生年金などによる「2階建て」と呼ばれる構造になっています。そして、2022年4月から施行される改正に伴い、受給開始時期の選択肢が拡大します。
日本トレンドリサーチ(https://trend-research.jp/12495)が、全国の男女計1,250名を対象に、「年金の受け取り年齢に関するアンケート」を実施しました。年金制度に対する世代別の意識調査について、改正内容と合わせてご紹介します。
何歳から年金を受給したいか?
現行の制度では、年金を受け取り始める年齢を60〜70歳の間で決めることができますが、改正後は60〜75歳の間で選ぶことができるようになります。65歳より早く受け取り始めた場合(繰上げ支給)は最大で30%減額、65歳より遅く受け取り始めた場合(繰下げ支給)は最大42%増額した年金を受け取ることができます。
これを踏まえ、「実際に何歳から年金を受給したいですか?」と質問したところ、「年金支給開始年齢」とされている65歳を選んだ方が、40代を除くすべての世代で、多い結果になりました。
65歳より早く受け取る「繰上げ支給」を選んだ方がもっとも多いのは、70代以上です。逆に65歳より遅く受け取る「繰下げ支給」を選んだ方は、40代が多く、70代以上が少ないという結果に。そのうち今回の改正法で新たに選択肢に加わった「71〜75」歳を選んだ方がもっとも多かったのも、40代で12.4%です。実際に年金の受け取りができる60代と70代以上の方で、選んだ方は共に4.0%でした。
そもそも「年金の受け取り開始時期を選べることを知っていましたか?」の質問に、70代で88.8%の方が「知っていた」と答えたのに対し、30代の50.8%が「知らなかった」と回答しています。年代によって大きく意識が異なる様子がうかがえます。
「年金を受け取りたい年齢」についての質問に対して「その他」と回答した方に、具体的に「何歳から年金を受給したいか」を質問しましたので、一部を紹介します。
受給のことを考えたことがない。(30代・女性)
まだ30代だし、その辺のことはよくわからない。その年齢に近づいた時、自分の貯金がいくらあるかを踏まえて検討したい。(30代・女性)
50歳からでもよさそう。(40代・男性)
年金受給年齢まで生きているかわからない。(40代・女性)
仕事できているかによる。(50代・男性)
そのときの状況で変わる。(50代・男性)
自営業でリタイヤする年齢をまだ決めていないので、受け取り年齢は現時点で未定。(60代・男性)
今年から共済年金部分が受け取れることになるが、いつ受け取ることにするか考え中。(60代・男性)
毎月の保険料と、受け取りたい金額の理想
次に、「年金の保険料(掛け金)は毎月いくらがいいですか?」の質問に対して、年代別に集計するとこのようになりました。
すべての世代で「0〜1万円」と回答した方がもっとも高く、「2〜3万円」と回答した方と合わせると、8割以上の方が3万円以下を希望しています。「4〜5万円」を選んだ方は、30代以下と70代以上で10%を超えました。
次の質問では、「年金で毎月いくら受け取りたいですか?」と、質問しました。年代別に集計したものがこちらです。
30代以下、40代、50代では「11〜15万円」を選んだ方の割合がもっとも多く、次いで「16〜20万円」の割合が多くなりました。60代では「16〜20万円」、70代以上では「21〜25万円」と回答した方の割合がもっとも多くなりました。年代が上がるにつれて、受け取りたい金額は高くなるようです。
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厚労省の資料によると、令和2年度の老齢年金支給額の平均は146,145円です。60代、70代で27%前後の方が「毎月受け取りたい金額」として回答した「11〜15万円」の範囲に入っています。
一方で、国民年金の保険料は16,610円(令和3年度)で、多くの方が「毎月の保険料(掛け金)の理想」として回答した「0〜1万円」の範囲を超えています。厚生年金に加入している場合は、標準報酬月額の18.3%が保険料(掛け金)となるため、保険料の負担は理想よりも大きいようです。
公的年金制度は現役世代が保険料を納め、その保険料を高齢者などへ年金として給付する仕組みとなっています。今回の年金制度の改正で、対象者の拡大や受給開始時期の上限変更などが施行されます。現役世代の負担を増やすことなく、高齢者への給付を継続できる仕組みを実現できるかどうかが、今後の課題と言えるでしょう。
「年金の受け取り年齢に関するアンケート」調査概要
調査期間:2022年2月4日~2月7日
集計対象人数:1,250名(30代以下・40代・50代・60代・70代以上 各年代250名)
調査対象者:男女
※原則として小数点以下第2位を四捨五入し表記しているため、合計が100%にならない場合があります。