京都の春の訪れは梅の花が咲くことで始まる。梅の花と言えば、京都では北野天満宮だ。地元では“北野さん”と呼ばれて親しまれ、受験の神様としても有名。近くには花街のひとつ、上七軒もある。京都で生まれ育った私、じつは中学・高校の6年間をこの北野天満宮すぐ近くの学校に通っていた。毎月25日、北野天満宮では縁日が行なわれ、様々な屋台が立ち並び、部活が終わると帰り道に立ち寄るのが習慣となっていた。

上七軒の街並み。北野天満宮のすぐ東側に位置する。

NHKの朝ドラ、『カムカムエヴリバディ』が京都編になり、この北野天満宮界隈が舞台となっている。北野天満宮の東門から上七軒にかけての道がロケで使われているようだ。主人公はこの北野天満宮の“天神さん”(縁日)で回転焼きの屋台に出会い、近くの商店街(と思われる)で店を構えることとなった。

北野天満宮の近くと言えば、北野商店街である。京都市街の碁盤の目で言うと、左上のほうにあたるエリアであるが、千本中立売と言う交差点から北野天満宮に向けて伸びる道(中立売通、一条通)にある。すぐ近くの西陣の台所とも言うべき、地元密着型、庶民派の商店街だ。きっとこの商店街がモデルとなっているのであろう。

北野商店街。中立売通から一条通に昔ながらの店がひしめく。

朝ドラの主人公は、そこで回転焼き屋を始める。この回転焼きという名称は、地域によって大判焼きや今川焼きなど様々な呼ばれ方があるが、50年近く前にこの商店街で回転焼き屋があったかどうかはわからない。しかし、北野天満宮からすぐ近くのところに、小さな和菓子屋さんがあったのは覚えている。それも回転焼き屋ではなく、みたらし団子屋。今から15年ほど前、北野天満宮に参拝した帰り道、今出川通を歩き、その店『日栄堂』に立ち寄った。

古い木造一軒家の小さな和菓子屋は、まさに昭和そのものの雰囲気を醸し出していて、売っているのも、みたらし団子だけ。和菓子で有名な京都だが、一種類に特化した和菓子屋は少ない。「見たら四つ刺さっていたから、みたらし(見たら四)」という笑い話もあるが、そのみたらし団子は白玉が三つ串に刺されていて、とても上品に見えた。京都ではタレの上からきなこをかけて食べる店が多いが、この店は焼きたてにタレだけがかけられていた。ひなびた雰囲気ながら、上品な甘さと滋味深い素朴な味わいに心を打たれたものだ。

今はなき『日栄堂』。木造平屋建てのこんな感じの店だった。

昭和そのものといった風情のあの店が、この朝ドラの和菓子屋さんのモデルになっているのではないか、と私は思う。今は残念ながら、この店は閉店してしまったのだが、京都でもあのような店は滅多にない。

幼少の頃からあんこに目がない“あんこ少年”だった私は回転焼きも好きだったが、京都ではたこ焼き屋が横で焼いていることが多い。今、北野商店街で回転焼き屋を売っている店も、たこ焼き屋のようだ。

北野商店街には、回転焼きを販売する店もある。

サライ最新号では春の京都を特集していて、表紙が北野天満宮の梅の花となっている。京都に花見にお出かけの際は、ぜひ北野天満宮と北野商店街にもお立ち寄りいただきたい。あのみたらし団子屋はないが、北野天満宮すぐ近くには『老松』と言う有名な和菓子屋もある。

なお、ドラマ劇中でよく出てくる鴨川べりは、北野天満宮からは3㎞ほどと遠いので、市バスの利用をお薦めする。また、今後、ドラマの舞台は太秦映画村に移るようだが、こちらへ行く場合は、北野天満宮からすぐ西側の北野白梅町から、京福電鉄北野線に乗り、撮影所前で下車が便利。コロナが落ち着いたら、ぜひ京都へカムカム、エヴリバディ! サライ3月号を忘れずに。

サライ3月号(2月9日発売)の
大特集は「春めく京都へ」。
別冊付録「京のおうどん」食べ歩き、には上七軒の町並みとうどん屋が掲載されています。

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文・絵/インディ藤田 写真/京都メディアライン

 

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