文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)

路を隔てて「セブン-イレブン」が向かい合っている。

タイでもコンビニは日常生活に無くてはならないものになっている。実際、この国でコンビニ最大手である「セブン-イレブン」の数は日本に次いで世界で二番目に多い(全国で1万店以上)。しかし、日本のコンビニとは違う点が多々ある。

例えば店舗のロケーション。日本であれば同じ会社のコンビニが道路を挟んで向かい合っているという状況はあり得ないだろう。繁華街では1ブロックごとにコンビニがあるなど、マーケティングというものを無視したような配置なのだが、それでもそれらの店が潰れることは少ない。

なぜなら、常夏の気候で生まれ育ったタイ人は歩くのが大嫌いだからだ。だから、数百メートルの小道(ソイ)を行き来するバイクタクシーという仕事が成り立っている。同じように、コンビニも道路の向こうへ渡るのは面倒だということになる。

また、タイでコンビニは近所の雑貨店より「少しランクが上」という位置づけになっている。おじちゃんおばちゃんが営むそれら雑貨店より商品の値段が数バーツ増しなのにコンビニに来るのは、プチ贅沢を楽しむためだ。流石に首都バンコクでは「高級感」は無くなっているものの、田舎に行くといまだにコンビニは別格な存在になっている。

それで思い出したが、20年程前、まだアメリカのファストフード店がこれほど地元の人に浸透しておらず、物価的にも高かった頃、マクドナルドやKFCの入店時にスタッフがドアを開けて迎えてくれていたものだ。

閑話休題。日本のメーカーの製品(洗剤やお菓子、ラーメン)がコンビニの棚をかなりの割合で占めている。日本料理も惣菜コーナーにある。数か月前にはコロナ禍で日本への観光旅行が出来なくてなっていることから、「I MISS JAPAN」というキャンペーンも行われていた。タイの人々の日本好きを物語るものだろう。

おにぎりや寿司もロングセラーの定番商品だ。

日本贔屓は有り難いことなのだが、時折、「?」と首をかしげてしまう物に出くわすのも事実だ。先日見かけた新商品は「タコ焼きソースの卵焼き」。タイ人は日本風のフワフワの卵焼きが大好きだから、それを製品化するのは分かるが、タコ焼きソース風味? お菓子コーナーでも変な日本語が目に飛び込んでくる。

お菓子コーナーでも変な日本語が目に飛び込んでくる。
「そのネーミングは何?」と問いかけたくなる製品が色々。

最近のコンビニの傾向のひとつとして「グルメ化」がある。地元の有名シェフたち監修による「シェフ・ケアズ(Chef Cares)」というシリーズの弁当は価格が普通の品の約2倍。その中には、タイのミシュランガイドで1つ星を獲得した「ジェイ・ファイ」の名物女性料理人のスピンヤ・ジュンスタさんがレシピ考案したタイ風鶏パスタもある。

エアコンなしの安食堂ながらミシュラン店である「ジェイ・ファイ」の味がコンビニで食べられる。

もうひとつの傾向として「健康志向」がある。今まであまり見かけなかったサラダも棚に数種類並ぶようになったり、実は「シェフ・ケアズ」も“Eat well,do good”というキャッチフレーズで味付けをヘルシーにしている。

コンビニからタイの「今」が見える。

文・写真/梅本昌男(タイ・バンコク在住ライター)
タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌アゴラなどに執筆。観光からビジネス、エンタテインメントまで幅広く網羅する。海外書き人クラブ会員https://www.kaigaikakibito.com/)。

 

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